Writingsコラム

お手軽に取り組めそうな菜食生活

昔から、アレルギー対策や健康のため、宗教、動物保護の観点などから、菜食主義となる人々はいました。最近では、環境負荷を減らすという目的のために、動物性食品よりも植物性食品を選ぶ人も増えたようです。厳格ではなく、フレキシブルに対応する「ゆるベジ」という言葉も見かけるようになりました。現在の菜食主義の世界はどうなっているのか、少しのぞいてみましょう。

菜食主義は、食べていいものの範囲で名称が違います。ヴィーガンは植物性食品のみを食べる人たち。ラクト・ベジタリアンは植物性食品と乳製品は食べており、ラクト・オボ・ベジタリアンはそれに卵が加わります。ペスコ・ベジタリアンはかなり寛容で、植物性食品、魚、卵、乳製品を食べています。このように、ヴィーガンに比べ、ベジタリアンの階層は意外にたくさんあるものなのです。

意識的に動物性食品を避けるだけといった、かなりゆるい菜食生活はフレキシタリアンと言われています。フレキシブルとベジタリアンを掛け合わせた言葉で、「ゆるヴィーガン」にあたる、頑張りすぎない菜食生活のことです。欧米では食べ過ぎた週末の調整に、月曜日に肉食をしない「フリーミート・マンデー」として野菜を多く食べることを習慣としている人もいます。

日本では禅寺の修行僧は動物性の食材や匂いの強いものを食べないものでした。そこから生まれたのが精進料理。卵や魚などを食べない修行僧たちの食生活はヴィーガンそのもの。また、明治維新以前の日本人は牛肉や豚肉、乳製品を食べることは一般的ではありませんでした。鶏肉や卵も値段の高い食材で、いわばご馳走。総じて魚以外の動物性タンパク質の摂取率は低く、ベジタリアン的な生活を送っていたといえるかもしれません。

菜食中心の食生活を送る上で、栄養的に気をつけたいのは、動物性食品からしか摂取できないビタミンB12、魚に多く含まれるビタミンDの不足です。意外なことにタンパク質は大豆食品や卵、乳製品から手軽に摂取できるようです。日本には豆腐や納豆など、大豆加工食品が豊富にありますし、昆布等で出汁をとる旨味のバリエーションも豊かです。肉食ばかりが続いたときは、伝統的な日本食を意識した食事を心がけるだけで、簡単にフレキシタリアンとなることができるのは、日本で生活する私たちの強みかもしれません。

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