Writingsコラム

栃木県・雷日本一(ただし夏に限る)

年々「梅雨らしさ」がなくなってきている日本列島ですが、梅雨明けのサインとして昔から「雷が鳴ると梅雨が明ける」とうものがあります。体感的にも7月は夕立の多い時期ですが、栃木県民は、夏の夕方には毎日雷が鳴るものだと思っているとか。栃木県と雷について、探っていきましょう。

雷は、暖かい空気が集まると上空に昇っていき(上昇気流)、雲を作り、その中で氷の粒がぶつかり合って上方にプラス、下方にマイナスの電気がためられます。雲が大きく、厚くなるにつれて電気はたまり続け、雲の下方にあるマイナス電気は、ある時を境に、地面のプラス電気を目指して一気に流れていきます。その時に激しい稲妻と音を発するのです。

栃木県は北部に1,000〜2,000m級の山脈が並び、南東方向の山の斜面は強い日差しを受けています。その上、夏は南から湿った風が吹いてくるため、強い上昇気流が発生し、雷が起きやすくなっています。宇都宮の雷日数は4〜9月に限ると平均24.2日。東京は12.9日ですから、約2倍。夏は毎日のように雷が鳴っているという栃木県民の認識は、このデータが裏付けています。

ただし、年間を通すとトップになるのが石川県金沢市で、平均で45.1日。2位は新潟県新潟市で34.7日になります。日本海側では12月と1月に雷発生件数が突出し、さらに他の地域同様に夏もよく雷が発生します。逆に、宇都宮で冬に雷が観測されることはほとんどありません。そんなわけで宇都宮は冬の雷数を稼ぐことができず、年間の平均雷日数26.5日にとどまり、ランキングは全国11位と大幅に後退してしまうのです。

ただ、栃木県民は雷を愛しています。昔から宇都宮市は雷都(らいと)と言われており、2021年にできた路面電車のライトレールは、稲妻をモチーフに流線型の車両に雷光の黄色をイメージカラーにしています。次世代型路面電車システム(Light Rail Transitライト・レール・トランジット=LRT)の愛称として、市民からの公募でライトレールに決まったのですが、宇都宮市民にとっての「ライト」は、深層心理では雷光なのかもしれません。

栃木県のご当地ヒーローも雷モチーフです。2014〜2019年まで、とちぎテレビで放送された特撮番組「雷様剣士ダイジ」は、栃木の名物料理を食べることでパワーアップし、悪い心を退治するというヒーローです。ちなみに宇都宮市内にある、とちのきファミリーランドの絶叫系アトラクションの名前は「雷様ストーム」。どちらも「かみなりさま」ではなく「らいさま」で、栃木県民は幼少期から雷様に親しんでいるようです。

落雷は怖いものですが、雷が多いと豊作になるという言い伝えもあります。雷のプラズマには植物の発育を促進するのではないかという研究もされているとか。稲妻は稲の妻という話もありますし、栃木のコシヒカリは全国4位の生産量を誇りますから、これはきっと雷様のご加護に違いありません。今年の秋に実る、雷様の恵みを存分に受けたお米の豊作を祈りましょう。

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