Writingsコラム

蚊問題〜傾向と対策〜

油断すると蚊に刺されてしまう季節です。刺されるとかゆみが生じて不快ですし、蚊が媒介してマラリアやデング熱に感染することもあり、人類としてはむやみやたらと刺されるわけにもいきません。蚊について学び、問題に取り組んでいきましょう。

蚊は100種類ほどいますが、血を吸うのは20〜30種くらいです。人や牛など温血動物の血を好む種と、ヘビやカエルなど冷血動物を好む種に分かれます。その中でも人間を対象にする蚊は5〜6種類。アカイエカやヒトスジシマカ(ヤブ蚊)、チカイエカが日本で見かける代表的な種となります。

蚊は25〜30℃で活性化し、メスだけが産卵のために吸血します。動物の血は栄養豊富なので、吸血は蚊の生存戦略なのです。ちなみにオスは花の蜜や植物についた水滴などを吸って生きています。アカイエカの場合、卵から幼虫(ボウフラ)になるまで1.5日。成虫になるまで10日ほどでメスの産卵準備が整います。一生の間、メスは数回産卵し、20〜40日ほど生き続け、種としての生き残り戦略を粘り強く展開していきます。

蚊に刺されるとかゆくなるのは、吸血の際、注入される物質が人体にアレルギー反応を起こすためです。かゆみの反応は人それぞれで、刺されても全くかゆくない人がいれば、猛烈にかゆいと感じる人もいます。年齢、性別、血液型等、特に関係があるわけではないようです。それでも実証実験によれば、刺されやすい人は体温が高く、二酸化炭素を発生し、体表に水分が多いタイプなのだとか。黒い色の服を着ていると刺されやすいようです。

つまり体温が高く、汗をかいている状態が蚊の好む条件なのですが、足の臭いや顔の脂にも反応することもわかっています。刺されたくなければ、手足を露出することのない白っぽい服装で、なるべく全身を清潔にすると良いらしいのですが、これも人によるという残念な報告があります。

蚊の吸血から身を守るには、虫除け剤を使う方法が一般的です。蚊が嫌う柑橘系の香りや、イカリジンやディートという成分が含まれた虫除け剤が効果的です。蚊がいなければ刺されることもなくなるので、蚊の発生を防ぐ対策も大切です。ボウフラは少量の水でも湧いてしまうので、放置したままの植木鉢や淀んだ下水溝などを掃除することで発生を防ぐことができます。

ディズニーリゾートに蚊がいないという話はご存知でしょうか。噴水や池、水路などがあるにもかかわらず、蚊が発生していません。その理由は、常に水が循環しているので、ボウフラは生きていけないからです。加えて、想定外の場所に水たまりができていないか巡回するなどの企業努力もあって、蚊が発生しないのだそうです。

人類を最も多く殺している生物は蚊ですが、一方で多くの人類が好きなチョコレートの原料であるカカオの受粉には、ヌカカという蚊が必要です。花が非常に小さいため、ハチやハエでは大きすぎるのです。

もし蚊がいなくなったら、蚊を食べるハエやトンボ、コウモリなども餌に困って減少します。そうなるとこれらを捕食する生物にも影響を及ぼし、生態系が大きく変化してしまいます。ですが、近年の温暖化の影響で蚊の活動が活発化すると、伝染病の脅威が増します。私たちにできることは、蚊の殲滅を図るのではなく、自分の生活圏を清潔に保って蚊との接触をなるべく避けていく程度にしておくのがいいのかもしれません。

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