Writingsコラム
鳥取県の推しは星空

47都道府県の中で、鳥取県は人口が最も少なく、2020年の国勢調査では55万3,000人ほど。人口減少は止まることなく、このままでは2050年には27%減の40万人余りとなる推計があります。しかし鳥取県は信号機や街灯が少なく、県庁所在地の鳥取市をはじめとした都市部もネオンも少ないことが幸いし、星の見えやすさを計る全国星空継続観察で何度も1位に輝いている県でもあります。そんな鳥取県は、デメリットをメリットに逆転させ、「星取県」を名乗りました。どんなことを行なっているのか、見てみましょう。
鳥取県が「星取県」を名乗り始めたのは、2017年4月から。スターバックスコーヒーが鳥取に未進出だった時代、「鳥取にはスタバはないが、日本一のスナバがある」というダジャレで有名な平井伸治知事が名付け親です。「CATCH the STAR」というキャッチフレーズで、観光客誘致に力を入れています。ちなみにスタバは、2015年にJR鳥取駅前にオープンしています。
県内には19の市町村がありますが、そのすべてから天の川が見えるというのは、都会から考えるとなんとも贅沢なこと。中でも県中央部に位置する三瓶山(さんべさん)を抱く三瓶町は、「夜空の暗さ日本一」に選ばれたことから、天然プラネタリウムの町を自称しています。三瓶山は国立公園内にあり、日本二百名山と花の百名山に選ばれた、標高854mと登るのにちょうどいい山。リフトもあり、体力に自信がない人でも山頂まで簡単にたどり着くことができます。
県では「星空案内人」を養成しており、県を代表する観光名所の鳥取砂丘や大山(だいせん)、三朝(みささ)温泉などで観光客にガイドを行っています。他にもプロカメラマンに星空写真のコツを教えてもらえるツアーがあったり、星空の下でのヨガ教室があったりと盛りだくさん。こうしたツアーは国内からの旅行者はもちろん、外国人観光客にも大人気だとか。
鳥取市の「さじアストロパーク」では、日本屈指の103cm反射望遠鏡で星空を観察することができます。プラネタリウムを備えており、雨天曇天時もがっかりすることはありません。望遠鏡のある宿泊施設もあり、時間を気にすることなく、ゆっくりと星空を満喫できます。
自然に恵まれた鳥取は、美味しい米どころとしても知られています。県東部はその昔、因幡(いなば)国と呼ばれていましたが、稲葉や稲羽とも表記されていたようです。また、米子市は米がよく取れるから名付けられたという説も。そんな鳥取が力を入れているブランド米は、その名も「星空舞」。2018年にデビューした星空舞は、粒感があり、適度な粘りを備えた、冷めても美味しいお米です。最高評価である特Aランクを獲得しており、猛暑に強く、台風の時も倒れにくく、病気にも強いという、栽培農家にも心強い特性を備えています。そのため、栽培面積も順調に増え続けているとか。開発チームは、農業の苦労を少しでも軽減してほしいという思いから品種改良に取り組んだそうです。
鳥取県を知れば知るほど、人口の多さや便利といった切り口が、少し色褪せて見えてきます。美しい自然と、美味しいお米に魚介類。さらに温泉にも恵まれている鳥取への移住者は、大きく目立つことはありませんが、じわじわと増えているそうです。