Writingsコラム

VUCA(ヴーカ) 不確実な時代

「まさか!」が現実になっていく今。この先、何が起こるのかわからず、時には未来に対して悲観的になることもあります。そんな不確実な世の中はVUCA(ヴーカ)と呼ばれていますが、この言葉が生まれた経緯と、そこからの進化をご紹介します。

VUCAは、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字で、訳語としてはUncertaintyに焦点を当てた「不確実な時代」となります。1980年代、アメリカとソ連(現ロシア)は世界を二分して対立していました。そうした時代のさなかである1987年、アメリカ陸軍戦略大学の資料にVUCAという記述があり、1990年の冷戦集結後の激動の世界を表現する軍事用語として使われ始めました。

その後、2008年にアメリカの投資銀行リーマン・ブラザーズの破綻から始まった金融危機では、世界的な株価下落や信用不安で世界中が混乱しました。金融危機が起きた原因は、金融商品があまりにも複雑で、システムが変動に耐えられなかったからだと考えられています。そうした事象を象徴する言葉がVUCAではないかと、2010年以降、ビジネス用語としても使われ始めました。その後、2016年の世界経済フォーラム(ダボス会議)において、現状が「VUCAワールド」であるとされたとで、広く認識されるようになりました。

似たような言葉として、BANI(バニ)が挙げられます。Brittle(もろい)、Anxious(不安)、Non-Linear(非線形)、Incomprehensible(不可解)の頭文字で、世界は複雑化しているのがすでに常態化しており、一層混沌としてきた状態を4つの形容詞で示しています。

BANIは、VUCAワールドに続くフレームワークとして、2018年に未来研究に特化した研究機関IFTF(Institute For The Future)から提唱されました。金融を例とすれば、システムは外部からの攻撃にもろく崩れる可能性が否めず、人々は騙されるのではないかという不安を抱き、市場のチャートは非線形でこれまでの常識が通用しなくなっており、非論理的で不可解な様相を呈すことがある……というように説明することができます。

同時に、こうしたBANIに対しての対処法も考察されています。Brittle(もろい)にはResilience(回復力)。Anxious(不安)にはコミュニケーションを介したEmpathy(共感)で、Non-Linear(非線形)にはImprovisation(即興性)が有効で、Incomprehensible(不可解)にはDifferent perspectives(多様な視点)をもって事象を見つめると問題を捉え直すことができる、と。

不確実ゆえに、ともすれば非寛容に傾きがちな世の中ですが、こうした世界に対抗するのは、回復力と共感、即興性、多様性が物事を解決する軸なのであれば、私たちはそれを忘れないようにしたいものです。

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