Writingsコラム

改めて、利他の心を考える

著名な経営者が「利他の心」を経営の指針としていることから、「利他」という言葉はよく目にしているのではないでしょうか。利他とは、自分よりも他人の利益を考えて行動すること。心新たになるこの時期、改めて利他について考えてみましょう。

利他は「自利利他(じりりた)」という仏教用語の一部です。修行で得た功徳を自分が受け取ることが自利で、他の人のための救済に尽くすことが利他。これを完全に一致させることが理想的な状態であるという大乗仏教の教えです。他人を思いやる言葉や行動をしていれば、思いやりが自分へと返ってくる。自分が幸せだと思うことを誰かにすることで、また違う機会に自分も誰かに幸せな気持ちにしてもらえる。そういった好ましい循環を表すのでしょう。

利他とは、他者を幸せにするために、自己をすべて犠牲にすることではありません。シンプルに、他者への思いやりと考えた方が腑に落ちる気がします。性差や障がいの有無など多様な属性への気遣いを持つ、気候変動や環境問題をはじめとした社会への意識を変えるなど、意識的、無意識的な利己的な行動を見直し、改めていくことが利他となるのだと思います。

特に経営者が利他の心を持つということは、利益を利己的に追求することなく、顧客のためになることが会社の利益となること。さらに顧客だけを視野に入れるのではなく、社会のために貢献できる事業を行うことが、利他の精神を実現することになります。目先の損得という低い次元ではなく、高い次元で考えようという意識改革の意味合いを感じます。

ビジネスパーソンとしての利他は、個人が無益な犠牲を払うことなく、多くの人々が喜ぶ成果を上げることとなるのではないでしょうか。また、自分たちだけ独占したり、得をすればいいと考えてしまうと、利用する人が限られてしまいます。それよりも地球規模で考える皆のための発想の方が、大きな成果につながると思います。

利他の心は、持続可能な社会にとっての共通認識なのかもしれません。改めて、利他の心で世の中を見渡してみませんか?

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