Writingsコラム

マーケティングとブランディング(4)

高岡浩三(著), フィリップ・コトラー(著)『マーケティングのすゝめ』で述べられているマーケティングの枠組みに基づきブランディングを捉え、社内外へのアプローチの方向性を定め、ロードマップを作成できたとしても、着実に実施することは容易ではありません。

なぜなら、ブランディングの目標は前回のコラムで触れたように「イメージの相違の解消」、つまり、認知度や想起率の向上といった質的で定量化しにくいものであるため、長期に渡り一貫性を持って粘り強く取り組まなければ効果が把握できないからです。ブランディングには数年単位の時間と相応のリソースが必要とされているのはそのためです。

比較的中小規模の会社の場合は、ブランディングを担当する人材がいて諸費用が賄われる目処があれば、トップの一存で施策を継続しやすいです。かたや大企業では難易度が高まります。特に縦割り体質のある大所帯の会社の場合、ブランディング担当の部署や選抜されたチーム(外部のコンサル等も含む)が論理的な裏付けのもと「今後はこうしましょう」と定めたとしても、一枚岩となるには相当の社内調整が必要でしょう。

さらには事業部門間に利害対立があったり、異なるビジョンや思惑が絡み合っていたりすると、一致団結するために協力を得ることは並大抵ではありません。そのため、ブランディングを担う人材やチームには、ブランディングのプロセスやアプローチ方法への理解だけでなく、コミュニケーション能力、根回しなどの調整能力、やり切るための根気や覚悟が求められます。

結束の重要性を説いた有名な逸話として戦国大名・毛利元就の「三本の矢」がありますが、まさにインターナルブランディングはバラバラになっている矢を束ね、目標に向けて強く射るための取り組みといえます。まずはともかく全社的な協調体制を築かなければ、対外的なブランディングを開始することは本来できません。

しかし、その束ねるプロセスにあまりにも多くの時間と労力を要してしまうなら、事業部ごとに分社化し、別々の専業企業としてブランディングすることを検討した方が良いケースもあるかもしれません。まとまらない社内の調整に手間取っている内にビジネス環境は刻々と変化し、競合はどんどん先行してしまうからです。その意味でも、ブランディングへの着手は早いに越したことはありません。

マーケティングもブランディングも売上を伸ばし、利益の増加に繋がる最重要の投資といえます。しかし簡単にはいかないのも事実です。今後も当社は人材紹介や教育研修のご提供を通じ、実践力のある人材やブランドの強化を求める企業に貢献できるよう、マーケティングとブランディングへの理解を深めていきます。

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