Writingsコラム

パクチー生産日本一!福岡県

追加料金を払ってでも増し増しにしたい人がいる一方、匂いが苦手で大嫌いなど、パクチーは好みがはっきり分かれる香草です。が、爽快な味わいと独特の香りがするパクチーは、アジア料理に欠かせない存在。30年くらい前まではあまり見受けられませんでしたが、今ではスーパーの棚の一角をしっかりと占めています。国内生産量トップは福岡県ですが、パクチーの日本市場への浸透ぶりと共に見ていってみましょう。

アジア料理の最初のブームは1980年代後半ごろに起きました。パクチーはアジアらしさを出すトッピングとして、少量あしらわれている程度でした。クセがあるため、嫌いな人は避けることができるように、目に留まりやすいところに置かれていました。その後アジア料理は一般化していき、パクチーにハマる人も増加。2007年、初のパクチー専門店が登場します。フード、ドリンク、デザートすべてにパクチーが使われており、パクチー好きが列をなす人気店でしたが、2018年惜しまれつつ閉店しました。ここからパクチーブームはしぼむことなく、今では「パクチー料理」という自らの名を冠した料理分野で定着しています。

パクチーの歴史は意外に古く、3,000年前から料理や薬として使われていました。日本でも平安時代の書物に「胡荽(こすい)」や「古仁志(こにし)」と記載されています。パクチーはタイ語で、日本では葉の部分を食べるときにこの名称が使われます。中国語では香菜(しゃんさい)で、中国料理で使う場合にこの呼び名が採用されます。英語ではコリアンダーで、種子をスパイスとして使う場合、この呼び名となります。カレーにコリアンダーは欠かせないスパイスですが、アジアやヨーロッパに限らず、中南米など、世界中の料理で使われています。

パクチーは日当たりが良く、あたたかい土地を好みます。発芽適温は17〜20℃前後、生育温度は18〜25℃前後で福岡県の気候と合っていますが、国内で栽培開始は1981年静岡県からです。しかし今、福岡県のパクチー生産量は153トンで日本一(※)。シェア率は26.8%で2位の静岡県85トン、シェア14.9%を大きく引き離しました。

実は福岡県には大規模パクチー農園があります。久留米市にある香月(かつき)菜園で、農地面積は3.5ヘクタール(東京ドーム2個分)、ハウスは76棟、年間出荷量75~78トン、多い日は1日に400kgを出荷するとか。パクチー業界では非常に有名な農園で、福岡県のみならず九州のパクチー農家を牽引する存在です。

2017〜20年まで九州地方は4年連続で水害に見舞われましたが、これを機に、香月菜園では高台へのハウス建設、生産地の分散化を進めました。2020年からのコロナ禍で出荷がほとんどできず、廃棄処分となった経験を踏まえ、出荷先を量販店向けメインから、地元の飲食店や業務用の契約販売を増やすなど複数の販路を確保しました。今後、パクチーの需要はさらに伸びると見込み、真夏や真冬に弱いパクチーであっても安定供給できる体制を整えているそうです。

パクチーは傷みやすいものですが、鮮度を保つパッケージや保管庫、輸送手段の確保が整えられ、全国で栽培農家が増えています。根強いファンがいて、消費量を着実に伸ばしているパクチーの生産体制は、福岡県の香月菜園を見本にどんどん強化されていくに違いありません。

※2020年農林水産省「地域特産野菜生産状況調査」より

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