Writingsコラム
ワーキングホリデーとは?

海外に興味がある人は、ワーキングホリデーの利用を考えてみたことがあるのではないでしょうか。一方、「ワーキング」ホリデーなのに働いていないとか、語学学校に通っているだけだとか、稼げるとか稼げないとか、様々な噂があったりします。そもそも就職なのか留学なのかどうかもわからない、という人もいるようです。人によって捉え方に差があるワーキングホリデーに関して探っていきます。
まず、ワーキングホリデーという制度は、利用できる年齢が決まっています。18歳から30歳まで(※1)。日本と協定を結んだ国で1年間、観光、修学、就労ができるビザが発給され、協定を結んだ29の国で過ごすことができます(※2)。1980年にオーストラリアとの協定から始まり、ニュージーランドや英国などの英語圏、ドイツやオランダなどのEUの一部、韓国、台湾などのアジア圏、中米ではアルゼンチンやチリなどが対象国となっています。
日本とアメリカはワーキングホリデーの協定を結んでいないので、この種のビザは発給されません。協定があっても詳細はさまざまで、カナダや英国(UK)、フランスやスペインは定員が決まっており、抽選制となります。一方、オーストラリアやニュージーランドには定員がなく、英語圏であること、治安の良さ、そして最低賃金の高さから、日本人にとって人気の渡航先となっています。
稼げる、稼げないという話の裏側には、為替レートと各国の最低賃金事情、そして語学力が関わってきます。例えばオーストラリアの為替レートは1オーストラリア・ドルにおいては90〜100円の間で推移し、2024年9月では95円前後。変動の幅はあり、2024年7月には一時108円になったこともありました。最低賃金においては、オーストラリアは2024年7月から時給24.10ドルになり、95円で換算すると2,289円になります。108円の場合は2,602円。日本の最低賃金は、2024年10月より引き上げられたといっても、最も高い東京都でも1,163円。オーストラリアの半額です。同じ時間働いたとしても、最低賃金が保障されている国の方が稼げるということになります。
就労先は、語学力がない場合は、農作物の摘み取りなどの肉体労働になりますが、現在のオーストラリアでは、こうした求人でも希望者が殺到しているため、語学力のある人が優先的に採用されるようです。語学力がある場合は、ホテルのスタッフや旅行会社で日本語通訳者としての需要がありましたが、昔に比べて日本人旅行客が減ったため、雇用状況はかなり厳しいとか。とはいえ、コミュニケーション力が高い人の方が語学も習得しやすく、その分、生活していきやすいようです。
ワーキングホリデーの受容幅が広いため、キャリアのプラスになりにくいというのはよく聞く話です。学生として留学先で一定期間学び、単位を獲得したという経験をした人の方が評価が高くなるのが一般的です。社会人として働いた後、仕事を辞めてワーキングホリデーに臨んだ人は、1年間の過ごし方を明確にしておかないと、ただの長い休みだと誤解されてしまうことになります。もちろん海外で得られた貴重な体験は、他人の評価はともかく、その後の人生をより豊かにしてくれます。が、その後の就職を考えるのならば、目的意識を持ってワーキングホリデーを過ごすことが鍵となるようです。
※1 オーストラリアとニュージーランドは35歳まで。
※2 2022年現在。外務省2020年データ26カ国に、イタリア、フィンランド、ラトビア3カ国が追加。