Writingsコラム
AI、そしてシンギュラリティ

文章や映像作成、医療、自動運転、企業や役所の窓口業務など、AI導入の分野は拡大し続けています。AIによってなくなる仕事が出てくる、社会がAIに乗っ取られるなど、無闇に恐れる意見もありますが、フラットな視点で概略をつかんでいきましょう。
今さらですが、ひとまず確認を。AIとは、人工知能(Artificial Intelligence) の略称で、人間が行う知的活動をコンピュータが実現することです。時と場合によっては、システムやソフトウエアを示します。その中でもテキストを作り出すChatGPTや画像生成のDALL-Eなどが生成AI(Generative AI)と言われます。学習データは人間が入力するのですが、生成AIはそこからディープラーニング(深層学習)で自ら学習したデータを基に、0から1を生み出すことができます。従来のAIは学習データの中から適切な回答を探すだけでしたが、生成AIは自分でアイディアを創出することができるのです。
実際の業務でもAIを活用するスキルが求められています。使う人がAIに適切で効果的な指示を出せば、業務時間が短縮されます。データ照合など単純作業をAIに任せることでヒューマンエラーを防ぐことができたり、大量のデータを分析し、予測まで行うことなどが期待されています。指示にはコツが必要ですから、今後、AIに適切な指示を出すことを専門とする職種が出現してくるかもしれません。
こうしたことから、従来の業務が変化し、雇用が減少するのではと危惧する声も聞かれます。ただ、ドライバー職をはじめ、農業、工場、工事関連業などは、人手不足が長い間解消できていませんから、AI化が現場の負担を軽減するプラス方向に働く可能性があります。
ただしAIの学習機能は、システム侵入するサイバー攻撃も簡単にしてしまうため、情報漏洩対策が求められているのも事実です。この対策にもAIの学習機能を利用していくしかないとも言われています。が、内部情報を人間が漏らす可能性も変わらずあります。また、AIに問題が発生したときに、カバーしている領域の業務が停止してしまう恐れも。そうしたことから、セキュリティ対策は専門知識を備えた人間とAIが組んで、という形が定番となるのかもしれません。
現在のテクノロジーにおいて、人間が優位なことは、触覚や嗅覚などの感覚、人間の好みや意識的・無意識的に考えている情報を持っていることです。こうした仕事は、ヘアメイクやマッサージ、介護など身体接触をする職業や、高い創造性を必要とするアートやデザインなどのクリエイティブな分野、はっきりしていないデータから方向性を探り出すマーケティング関係など、たくさんあります。多忙を極める医師や教師などもAIをうまく活用して、瑣末な業務を減らし、職場環境を改善することが可能です。
人間と同レベルのAIが出現する技術的特異点(シンギュラリティ)は、今から20年後の2045年にやってくると予測されています。そこに至るまで、どんなことが起こるのか不安かもしれませんが、前向きな変化が起こることを期待しましょう。