Writingsコラム
岐阜県の白川郷と白川町

東京のJR青梅線・青梅(おうめ)駅と、ゆりかもめの駅・青海(あおうみ)駅を間違えてライブに行けなかった人の話や、調布市の仙川(せんがわ)と豊島区の千川(せんかわ)を聞き違えて話が噛み合わなかったなど、勘違いされやすい場所はあるものです。岐阜県の白川郷と白川町もその一つ。どこがどう違うのか、詳しく見てみましょう。
まずは岐阜県に関しての基礎知識を頭に入れておきましょう。日本の中央に位置し、海に面してはいませんが、面積は全国7位とかなり広い県です。北部山岳地帯の飛騨、平野が多い美濃と、昔は二国に分かれていました。白川郷のある白川村は飛騨地方。白川町は美濃地方にあり、直線距離で80kmほど離れています。
参考までに、岐阜県で一番大きな面積を占めているのは高山市で、県内のみならず、日本で一番広い市町村です。面積は岐阜県の2割を占め、東京都とほぼ同じくらいの大きさで、大阪府よりも広いのです。飛騨地方はこの高山市、飛騨市、下呂市、白川村の3市1村で構成され、岐阜県の面積の4割を占めます。
世界遺産となった白川村の白川郷は、石川県と岐阜県の間にまたがる標高2,702mの白山(はくさん)の東側にあります。屋根の斜面が急な合掌造りの茅葺き屋根が印象的ですが、飛騨地方の山岳地帯に位置するため、雪対策として機能的な構造となっています。
一方、白川町は美濃地方にあります。飛騨地方に近く、こちらも面積の8割以上を山林が占める山村ですが、降雪量はそれほど多くありません。街の中心を白川が流れ、黒川や赤川など、川の恵みが豊かな土地で、内陸性の温暖な気候のため、お茶づくりが盛んです。
地名が似ているせいか、白川郷に行こうとして、間違って白川町に来る観光客は後を絶たず、白川町観光協会にも「白川郷へ行きたいのですが」という問い合わせが多いとか。白川郷は東海北陸自動車道の白川郷インターチェンジからすぐですが、白川町からルート変更をすると約2時間以上かかってしまいます。間違えられた白川町の人たちは「違いますよ」と優しく教えてくれるのですが、落胆する人たちのために、ラッキーボックスと名付けた抽選箱を2019年から設置し、ポストカードや町自慢のお茶のプレゼントをしているとか。そんな白川町の人たちの人柄と、大正時代に建設された吊り橋、清流や山に囲まれた豊かな自然を満喫するため、民泊や移住者が増えているというのもいい話です。
ちなみに白川町の隣には東白川村があります。実は明治時代、白川町は西白川村という名でした。東には東白川村があり、美濃地方に白川村は東と西、二つあったのです。昭和に西白川村が周辺地域と合併して白川町に。東白川村はそのまま残った、という経緯があります。東白川村ではなんと、ツチノコを探すイベントが行われており、発見者には賞金も出ます。見つからなければキャリーオーバーしていく制度で、毎年1万円ずつ上積みされています。第33回となった2025年5月時点では133万円で、参加者は2,500人以上いたということです。
岐阜県にある3つの「白川」はそれぞれ個性があります。間違えてしまったら、その土地なりの「白川」を楽しんでみてはどうでしょうか。面積の大きな岐阜県ですから、下呂温泉や郡上八幡など観光スポットも豊富です。時間にとらわれず、長期にわたって楽しむのが岐阜県の旅の最良の方法かもしれません。