Writingsコラム
千葉県のイセエビ!

正月のお膳を華やかに飾る伊勢海老ですが、名前の由来と言われている伊勢市を含む三重県よりも、房総半島沿岸から取れる千葉県の漁獲量の方が多いことをご存知でしょうか。
まず、「伊勢海老」を名乗ることができるのは、農水省と保健所によると、イセエビ科イセエビ属のイセエビで、三重県産のものに限るとしています。これ以外の国産、および外国産は「イセエビ」と表記するようにと指導されています。よって千葉県産のものはイセエビとカタカナ表記。三重県産のものでも、海老の漢字表記が読みにくいという配慮から「伊勢えび」となっている場合もあります。
千葉県外房沿岸で獲れるイセエビは「外房イセエビ」としてブランディングされています。もともと茨城県から千葉県にかけての太平洋側が、イセエビが好む貝類や海藻が豊富なため、良い漁場となっており、その部分の多くに該当する千葉県外房沿岸の漁獲高が高くなっているのです。外房イセエビは夷隅(いすみ)東部漁協、御宿(おんじゅく)和田漁協、新勝浦漁協で獲れたものと規定されています。
イセエビは海底付近を這い回り、ウニを含む貝類や小型のカニやエビ、イカやアジなどを、そのがっしりしたあごでバリバリ粉砕して食べていきます。捕獲するには海底に「底刺し網」と呼ばれる網を落とし、イセエビを網に絡ませて動けないようにし、そこを引き上げるという漁法を使います。イセエビは夜行性なので、漁師は夕方に網を落とし、夜中から早朝にかけて引き上げます。捕獲したイセエビを市場に引き渡してから、漁師は底刺し網の絡みや破れを補修し、海藻などを取り除いて、夕方に仕掛ける。漁期にはこれが繰り返されます。
イセエビは大型で傷のない見栄えのいいものほど高値で取引されます。食用として育つまで3年かかり、餌の実態があまりよくわかってないため、養殖が困難で、どうしても値段が高くなります。千葉県では漁獲禁止期間(6〜7月)を設け、捕獲できる大きさは全長13cm以上と定めて水産資源保護に努めています。漁業者は基準以下のイセエビを海に戻すようにしています。
実は、安く出回っているイセエビは、オーストラリアやアフリカで獲れるミナミイセエビが多いようです。イセエビと同じような高級エビとしてオマール海老がありますが、こちらは大きなハサミがあり、アカザエビ科でザリガニの一種でイセエビ科イセエビ属のイセエビとは種が違います。ちなみに安価なミナミイセエビは、イセエビ科ミナミイセエビ属に分類されています。日本でイセエビを名乗れる外国産のものは、フロリダ産のアメリカイセエビとキューバのキューバイセエビに限られ、原産国の表示が定められています。
千葉のイセエビは、立派な触覚と暗褐色の殻を持ち、黒潮にもまれているため身プリプリしているのが特徴です。漁の解禁日は8月1日からで、太平洋側の外房だけではなく、東京湾沿いの内房でも夏から秋にかけての風物詩としてイセエビ祭りが開催されています。炭火焼きやつかみ取りなど、各地で楽しいイベントが行われていますので、訪れてみてはいかがでしょうか。