Writingsコラム

失敗の活かし方

「私、失敗しないので」と自信満々に口にしてみたいものですが、残念なことに人は失敗するものです。失敗から目を背けるか、直視して次に活かすかで、仕事も人生も違ったものになっていきます。誰もが経験する失敗を、どう活かしていくか考察していきましょう。

まず「失敗した」と思った時、隠したり、見ないふりや思考停止に陥って時間を無駄にするのはやめましょう。仕事であれば、即座に上司に報告し、対処に専念することが肝心です。先輩やチームメンバーの協力を仰いだり、迷惑をかけた人に謝罪をするなど、まずは失敗がもたらした影響に対処します。その後、落ち込んでもいいのですが、「一度寝たら忘れる」など、期間を限定するなどして気持ちを切り替えましょう。そうして冷静さを取り戻したら、失敗を素直に受け入れます。失敗を隠蔽したり、保身のために嘘をつくなどは、最悪の手段です。

次にすべきことは、失敗の原因を追求することです。想定やプロセスが間違っていたのではないか、足りないものは何であったのか自問し、事態に対しての振り返りを行います。その際、第三者からの耳が痛い指摘に耳を傾けて事態を把握するなど、できる限り問題を客観視して原因をクリアにしていきます。

これらのステップを踏んだ後、失敗から得た教訓を言語化し、この先、どう活かしていくか考えます。落ち込みすぎず、次のために「やってはいけない事例」としてその経緯と解決法を自分自身や組織の中に蓄積します。不足していたのは何だったのかを具体的に捉えていくことも大切です。同じ失敗は二度としないという教訓をしっかり刻みましょう。

第二次世界大戦に旧日本軍が犯した失敗を、ノモンハン事件やミッドウェー海戦など6つの作戦から分析した有名な書籍「失敗の本質 日本軍の組織論的研究」(文庫版1991年刊 戸部良一、野中郁次郎ほか)があります。組織の欠陥としていくつか事例が挙げられますが、その一つに「失敗からの学習不足」が挙げられています。旧日本軍には過去の失敗を検証せず、同じ過ちを繰り返す傾向が見受けられ、同じような原因によって失敗を繰り返した、と指摘されています。

他にも情報軽視とフィードバック不足、不確実性への対応力不足、過度の楽観主義、客観的データを都合のいいように曲解、合理的判断を退ける情緒主義の蔓延など、現代の組織にも通じる失敗の分析がなされています。文庫化から40年以上経った今でも、経営やコンサルティングに関わる人たちの必読書と言われるほどです。

論文がベースとなっているため、難解で読みにくいという意見もありますが、戦後80年の夏、長期休暇を機に手に取ってみてもいいかもしれません。

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