Writingsコラム

鹿児島県のお茶

2024年、茶の生産量日本一の座が静岡県から鹿児島県になったというニュースが流れました。高齢化の影響で全国的に作付け面積が減少している今、鹿児島の生産量が伸び続けているのは驚異的です。ですが、消費量は静岡県がトップを守り続けていることから、鹿児島のお茶は県内で消費されるよりも、県外や海外で飲まれている模様。鹿児島茶の特徴について知っていきましょう。

日本三大銘茶として知られているのは静岡の静岡茶、京都府の宇治茶、埼玉県の狭山茶です。場所を九州に限ると、福岡県の八女茶、佐賀県の嬉野茶、そして鹿児島県の知覧茶となります。

鹿児島茶の生産量がどんどん伸びているのは、温暖な気候と広大な平地を擁するため、機械化を進めやすかったためです。鹿児島県は茶葉生産に特化し、宇治茶や静岡茶のように茶を加工・販売する分野は後手に回っていました。昭和後期から、知覧茶や霧島茶などの全国的に有名なブランド茶も増え、知名度が上がりました。

また鹿児島茶は「走り新茶」としても知られています。普通、新茶は「茶摘(ちゃつみ)」という唱歌で「夏も近づく八十八夜」と歌われるように、4月末〜5月頃に摘まれた茶葉で作られます。この時期よりも前、4月上旬頃から摘むことができるのが、温暖な気候で育つ鹿児島茶。さらに暖かい種子島や屋久島では3月に新茶を摘むことができます。甘みの元となるテアニンがたっぷり含まれ、苦味となるカテキンはあまり含まれていない、まろやかな味わいが特徴となっています。

甘み成分をアップさせるために、収穫前にいったん黒い網で被覆(かぶせ)をして日差しを遮るのも鹿児島茶の特徴です。強い日差しは茶葉の生育を促してくれますが、仕上げに遮ると茶葉が葉緑素を増やそうと頑張るため、緑が濃くなり、淹れた時に濃い美しい緑色になるそうです。

鹿児島県は南北に長く広がっているため、4月の新茶に始まって8月中旬の4番茶まで途切れることなく収穫することができます。実は作付け面積は静岡に劣るのですが、南国で南北に広がっているという地理的特徴が生産量日本一となった理由でもあります。

世界中で抹茶人気が高まっているせいか、抹茶の供給不足もささやかれています。2024年のお茶輸出量のうち、大部分が抹茶です。例えば、鹿児島県の抹茶メーカー「ヘンタ製茶」は生産の8割を米国とEUに向けて直接輸出しているのだとか。抹茶の原料である碾茶(てんちゃ)は日陰で栽培し、手積みで収穫。選別を経て、熱が加わらないよう石臼(いしうす)で製粉されるという手間暇がかかるものです。一応、機械化が進み、冷却装置付きの金属臼を使って挽くのが一般的になりましたが、粉砕工場不足も問題となっています。

そんな品薄の抹茶の代替え品として「あらびき茶」に注目が集まっています。一番茶をそのまま粉末化したもので、抹茶よりも煎茶の爽やかな風味が際立っています。水に溶けやすく、お茶の栄養素も丸ごと摂取することができるというメリットも見逃せません。これに緑色が美しい鹿児島茶が使われることが多く、これからの需要と生産力拡大にも期待がかかっています。

アーカイブ

ページ上部へ戻る