Writingsコラム
辛いは、体にいい?悪い?

無性に辛いものが食べたい。スパイスたっぷりのカレー、キムチ鍋などの韓国料理、それとも麻婆豆腐や担々麺など、ピリ辛から激辛まで、辛い料理は世の中に溢れています。熱狂的ファンも多いものですが、食べ過ぎてお腹の調子が悪くなることもあります。辛いものとの上手な付き合い方を探っていきましょう。
辛いものを食べたくなったときは、暑い寒いという不快な気候や対人関係のトラブルなど、脳は何らかのストレスを感じています。辛いものという別の刺激を求め、食べることによってエンドルフィンという快楽ホルモンが分泌されます。エンドルフィンはおいしいものを食べた時にも出るため、辛いものを食べると「おいしい」と感じる回路が出来上がります。この繰り返しが「やみつき」という状態をもたらし、幸福感を得るために、辛いものを食べ続けることになります。
ピリッとした辛さは、甘味、酸味、塩味、苦味、旨味という、基本的な5つの味に含まれていません。辛さは口の中の感覚神経では刺激と分類されます。この感覚神経は43℃以上の熱さも刺激と感じます。英語で辛い味をHotと表現しますが、辛いと熱いは同じことだと感覚的にとらえていたのかもしれません。
もう一つ、辛いものには体温を上げる作用があります。暑い時に辛いものを食べると、外気温の影響で高くなった体温がさらに上昇し、下げようと汗をかくことで体温が下がります。一方、寒い時には汗は出ず、体がぽかぽかする程度の反応になります。こうした反応は、体温を含め、体内を一定の状態に保つ恒常性(ホメオスタシス)の働きによります。
辛いものを食べ続けていると、どんどん激辛に傾いていくことがあります。ですが、口の中を刺激する辛味成分は、口の中だけではなく消化器全体にも刺激を与えてしまうため、摂取しすぎると胃が痛くなったり、下痢につながることもあります。喉の調子が悪い時に辛いものを食べると、咳がひどく出ることもあるので注意が必要です。いくら好きだからといって、無理に食べずに、自分の体が発する声なき声を聞くようにしてください。
適量を楽しむ程度ならば、軽いストレスを解消してくれ、体温上昇による代謝のアップ、食欲増進につながります。というわけで、辛いものは食べすぎることなく、個々の許容量に合わせた摂取が大切です。どんな激辛料理を食べても平気な人がいる一方で、辛いものを受容しがたい体質の人もいるので、辛いものを他人に強要することは厳禁。家族全員が食べる料理はあまり辛くしすぎることなく、調味料を適量足すことで自分好みの辛さにするなど、工夫していきましょう。