Writingsコラム
ルビーの透明性

輝く太陽の季節である、夏。従来の常識を超えた暑さに負けてしまいそうになる今日この頃ですが、太陽は生命力の象徴として古代から敬われていました。そんな夏の太陽にイメージを重ねた宝石がルビー。7月の誕生石となっています。ルビーについて知っていきましょう。
実はルビーとサファイアは、共に酸化アルミニウムでできた鉱物(コランダム)で、クロムが入ると赤く発色し、チタンが入ると青くなります。コランダムは混入物によって様々な色に変化する石で、緑、黄、紫、無色等、赤以外のものは全てサファイアと分類され、赤色のみがルビーと呼ばれています。
ルビーの赤色は、濃く、鮮やかであればあるほど高価です。最も価値が高いのがピジョン・ブラッドと言われるもので、大部分がミャンマー産です。次のランクがビーフ・ブラッド。透明度は落ちるものの深いコクのある赤が特徴で、主にタイで採掘されています。チェリー・ピンクという透明度の高いルビーは、ピンク・サファイアに分類されることもありますが、透明度が高くほんのり薄い赤味がかわいいと人気です。
史上、最も高価なルビーは「エストレラ・デ・フラ」と名付けられたモザンビーク産の55.22カラットのもの。2023年にオークションで4,480万ドル(約49億円)の値がつきました。それ以前の高額記録はミャンマー産25.59カラットの「サンライズ・ルビー」が2015年に打ち立てた2,825万スイスフラン(約36億円)でした。どちらもピジョン・ブラッドで、透明度と彩度が際立ち、他に類を見ない特別なルビーだと言われています。
ルビーの価値を高める要素がもう一つあります。それは6本の星のような光の筋模様が現れるスタールビーです。透明度は劣るものの、存在自体が珍しいので、高価なものになります。6本の線が組み合わさった星の形は、ルビーだけに限りませんが、滅多に出るものではありません。その希少性を表す例として、アニメ化や映画化されている漫画【推しの子】では、登場人物の瞳にスター性やカリスマ性を示す印として描かれています。
最高級とされるピジョン・ブラッドの産地であるミャンマーは、2021年の軍事クーデターにより、軍事政権となりました。そうした政治や、採掘現場の劣悪な状況などから、欧米を中心としたハリー・ウィンストンやティファニーなど大手宝飾ブランドが、ミャンマー産ルビーとヒスイの調達を停止しています。現在、流通しているミャンマー産のピジョン・ブラッドは、少なくとも数十年前、もしくは数世紀前に採掘されたものだと言われています。
ルビーは美しい宝石ですが、ダイヤモンドなど他の宝石と同じように、透明性のある出自が求められつつあります。美しさの陰に潜む現実についても、深く見つめていきたいものです。


