Writingsコラム
夏を彩る華やかな金魚

夏の風物詩といえば金魚。金魚すくいでお馴染みの和金(わきん)、丸みのある琉金(りゅうきん)、頭部にコブがあるオランダ型、背鰭を持たないずんぐりした卵形の蘭鋳(らんちゅう)など、たくさんの種類があり、それぞれ独自の美しさがあります。生きた芸術作品といえる金魚について、少し探っていきましょう。
金魚を愛でる文化は2,000年ほど前、中国から始まります。通常は黒や褐色であるフナですが、赤い色のものが見つかり、「これは珍しい」と富裕層対象の趣味として鑑賞されていました。しばらくして品種改良が始まり、日本には室町時代の1502年に伝わってきました。江戸時代に養殖技術が確立され、庶民も品種改良に参加するなど、一般的な趣味になりました。
江戸の金魚アートといえば、浮世絵師・歌川国芳の「金魚づくし」が挙げられます。金魚にカエル、亀などが擬人化され、宴会をしたり、シャボン玉を吹いたり、化け猫を怖がったりと、ユーモラスに描写されるシリーズです。一般の浮世絵の半分サイズの、こうした「戯画」は、気軽に楽しまれていたようです。「金魚づくし」は現在9点残っています。
現代の金魚アートの代表的アーティストは2人います。ビジュアルと音楽、光を用いて幻想空間を作り上げた木村英智の「アートアクアリウム」は、夏の定番展覧会として定着しています。もう一人が、本物そっくりに金魚を描く2.5Dペインティングを確立した深堀隆介。国内外での個展をはじめ、「金魚美抄(きんぎょびしょう)」という企画展も主催し、全国の金魚愛に溢れたアーティストたちと作品を展示しています。
金魚を飼うための水槽は「金魚鉢」と、魚の種類を限って名付けられているほど、金魚は身近な観賞魚です。私たちが連想する、丸みのあるガラス製の金魚鉢が普及し出したのは、大正時代ごろから。江戸時代は全般的にガラス(ビイドロ)製品は高級品で、富裕層のものでしたが、風鈴のような形をした吊り下げ型の「金魚玉」も作られ、涼を感じる風流アイテムとして楽しまれていました。喜多川歌麿の美人画「金魚玉を持つ女」が代表的ですが、初代豊国、豊広、国貞なども金魚玉と美女の組み合わせで作品を作り上げています。
とはいえ昨今の日本の夏では、金魚を小さなガラス鉢や玉に入れ、室温で飼ってしまうと命を縮めることにつながります。室温はエアコンや冷却ファンを使って28℃以下。水温は30℃を超えないようにし、直射日光を避けるのが望ましい飼い方です。特に夏は、餌の食べ残しや糞が原因で水質が悪化しがちなので、こまめに水替えをして、エアーポンプなどで酸素量が適正になるように調節してあげなければなりません。
生き物を飼うのは責任が伴うものですが、金魚を鑑賞するだけのアプリや、簡単な世話で成長を楽しむアプリなどもあります。まずはそのあたりから始めてみるのもいいかもしれません。


