Writingsコラム

基礎と応用(1)

何事においても基礎が大切というのは、よく言われていることです。勉強でもスポーツでも、子どもの時分から基礎的な素養や技能を身につけなければ伸びないということは常識とされています。今回は、大人になってからの社会生活における基礎力の重要性と応用力との関係について考えてみます。

さて、移り変わりの早い昨今、技術の陳腐化や製品がコモディティ化するスピードは年々増しています。そのため、せっかく覚えた知識がすぐに役立たなくなってしまうのではないか、現状のままではうかうかしてはいられない、というような焦った気分になることがあります。また、日々慌ただしく過ごしていると、自分自身の労働市場における価値や将来性は如何ほどか、客観的に分からなくなることもあります。目まぐるしく変わっていく社会経済状況に翻弄されて右往左往してしまうことを避けるためにも、世の中の雰囲気がそういうときほど地に足をつけて冷静に物事を見据えたいものです。

いつの時代であっても失われる仕事と新たに生まれる仕事はあり、テクノロジーの進化に伴う世代交代や新陳代謝は付きものです。例えば、現在は需要の多いウェブサイトの制作に関連する業種は、20年ほど前にはほとんどありませんでした。また、フィルムカメラ、デジカメ、スマートフォンと、写真を撮るための機器はほんの10数年でどんどん移り変わりました(元々、スマホは電話の系譜ですが、カメラやゲーム機など他の製品・サービスの需要を侵食していると言えます)。現在でも一部のプロや愛好家の間ではフィルムのカメラは使用されていますが、一般的にはスマホがカメラ代わりになり、撮影可能な枚数は飛躍的に増え、画質も向上の一途をたどっています。

変化の仕方やスピードがどんな程度であっても、移り変わる産業構造に合わせて業務内容や働き方を変えていかねばなりません。抜本的な変化に柔軟に応じるには、新しいことにも臆せず常に学び続ける姿勢や好奇心、知識欲などが欠かせません。効果的に学び続ける上で軸となるのが基礎力です。基礎的な知識や技術が乏しければ、いくら意気込んでも変化が起きる度に翻弄されてしまうからです。

写真撮影のプロであるフォトグラファーの場合、撮影の基礎を身につけている方であれば、フィルムであってもスマホであっても、人並みはずれた視点の作品や素人とは一線を画したクオリティの写真を撮ることができるでしょう。テクノロジーの進化、つまり機器の違いは、写真撮影に関する知識や技術を応用することでカバーできるからです。また、プロには長年にわたり培ったセンスやスタイル、経験則や第六感のようなものもあるため、現場での対応力や応用力の幅も広いのです。(次回につづく)

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