Writingsコラム

長時間働くこと(1)

ここ数年、残業してはいけないという風潮が強まってきました。働き方改革の議論や取り組みも注目されています。

残業禁止の前提には、労働力人口の減少による生産量への影響があります。その対策としては「労働時間を増やさず、生産性を上げること」、つまり、労働や資本に加え、技術革新、業務効率化、規制緩和、ブランド価値など全ての要素を投入量とする全要素生産性を上げるべきだということがいわれています。

ところで、戦後から高度成長期にかけて、日本人は文字通り身を粉にして働いてきました。右肩上がりの時代には、長い労働に見合った売上、利益があり、長時間労働が美徳と捉えられている側面もありました。労働投入量の増加が成長に繋がっていました。そんな日本経済を脅威に感じた外国からエコノミックアニマルだと揶揄されることもあったようです。その後、バブルが崩壊しても長時間働く傾向は変わらず、景気が悪くなっていくなか雇用への安心が揺らぎ、一心不乱に働くほかないという雰囲気がありました。

バブル崩壊から2000年代においては、ワークライフバランスが着目されたり、個別の事案による議論の再燃はありましたが、働けば働くほど良い、残業は当たり前という風潮はまだまだ強かったように思います。しかし近年では、ビジネスのアイディアや全要素生産性が企業の業績を左右し、人手不足が深刻化するなか、仕事の効果効率がより一層問われるようになってきました。

そのような状況のもと、日本の労働生産性は他の主要国と比べて低いとの指摘があり、残業禁止の根拠にもなっているようです。労働生産性が低い理由の一つとして、”Japan as number one”と呼ばれた時代の働き方をなかなか変えられないということが言えそうです。長時間労働に繋がる職場慣行が経験則や成功体験として根強く残っているのかもしれません。(次回につづく)

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