Writingsコラム

ベーシックインカムについて(2)

テクノロジーの進歩や労働力人口の減少に伴い生じ得る格差是正の議論に際し、近年、ベーシックインカム(基礎的所得)が話題に上っています。すべての人に最低限度の健康で文化的な生活をするための所得を給付するという制度ですが、メリットとデメリットが指摘されています。

主なメリットとしては、貧困対策、少子化対策、社会保障制度の簡素化、行政コストの削減、労働意欲の向上、余暇の充実、非正規雇用問題の緩和、ブラック企業の矯正、産業空洞化の防止、消費税の逆進性の解消、経済活動におけるセーフティネット、勉学における機会の平等、職業選択における機会の拡大、犯罪の減少等々です。

良いこと尽くめな印象ですが、デメリットも当然ながら指摘されており、大別すると精神論的なものと経済学的なものとがあるようです。まず精神論的な面での批判としては、勤労美徳や労働意欲の低下、犯罪の増加等であり、消費者金融の担保になる、資金の国外流出、非労働者の海外脱出、詐欺、反社会的勢力の資金源になってしまう等々も挙げられています。次に経済学的な面での批判は、財源の問題、経費膨張、所得の海外移転、最低限必要な労働や効率性の低下、信用取引の限度枠の低下、行政コストの増加等が言われているようで、様々な影響がありそうです。

遠くない将来に日本で当制度が導入されるかどうかは分かりませんが、現在も幅広く賛否両論があり、導入に向け議論が煮詰まるまでには諸外国の先行事例も参考にしながら諸々の検討が必要でしょう。

労働意欲や勤労美徳にベーシックインカムがどう影響するのか興味深いですが、個々人の意欲が如何様であっても、テクノロジーの進歩は不可逆的で、また、労働力人口が減っていくことは避けられそうになく、格差が広がる可能性はあります。そのような状況変化に対しては「自分が志向する働き方、そして求められる能力はどのようなものか、それらを実現するには現状では何ができて何ができないのか、今からすべき行動と考え方とは」というように常日頃からの内省と正しい努力を継続し、自ら意欲を高める姿勢が重要になるでしょう。

当社の事業は働き方の変化と密接に関連しています。今後も社会経済状況を見据え、転職希望者の方々と、成長と発展を目指す企業のお役に立てるよう専心してまいります。

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