Writingsコラム

しなやかな強さ(1)

個人生活でも社会生活でも、人間誰しも気落ちすることはあります。大きなアクシデントに限らず、日々の些細な物事もストレスになりますし、対人関係やコミュニケーションで苦手意識を持ってしまったりと、悩みは尽きません。

仕事でも、どこか億劫な気持ちになることは日常茶飯事です。わりとすぐに立ち直れる性格でも失敗が重なると、だんだん負のスパイラルにはまり、落ち込みが深まってしまうこともあります。「最近ちょっとダメかも…何もかも自信がなくなってきた…同僚や友人は上手くやっているようだ」というように、他者と比較して惨めな気持ちになったりもしますね。

落ち込んでしまったとき、その心境にどっぷり浸かるのも一つの手です。意気消沈している自分を否定せず、正直な気持ちと向き合い、なぜこんな状況になっているのか少しずつ考えられるようになるまでゆっくり休みましょう。すると、他者が自分よりも良く見えるのも明確な根拠があるわけではなく、捉え方次第だと思えてきます。

リンダ・グラットン著『未来企業 -レジリエンスの経営とリーダーシップ-』(プレジデント社)で取り上げられている「レジリエンス(resilience)」という心理学の用語があります。同書では「レジリエンスのおおもとの意味は、負荷がかかって変形したものが、元の形状に戻る力であり、これが転じて、ストレスからの回復力、困難な状況への適応力、失敗や挫折からの再起力や復元力といった意味合いでも使われるようになった」と紹介されており、不確実性の増す昨今、企業組織にも個人にもレジリエンスがより重要になっていると述べられています。

元来、人間には自ら回復する力、自己治癒力が備わっています。何かをきっかけに弱ってしまったとき、当初はジタバタしますが、少し落ち着いてきたら「慌てない、一休み、一休み」と時間を味方につけ小休止してみましょう。自分を労っている内に、事態を好転させるにはどうすれば良いか、対処の方向性が見えてくるはずです。

失敗してもポキッと折れずに、なるべく早く立ち直りたいものです。そのためには、日頃から自らのレジリエンスに意識的であることが肝要でしょう。(次回につづく)

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