Writingsコラム

与件を捉えること(3)

近年のアノマリーでは株価が上昇する傾向にある12月ですが、日経平均、NYダウが共に大幅に下落しています。報道ではFRBによる利上げが発端との位置づけですが、米中の関税問題、イギリスのEU離脱が迫っているといった政治経済の動向を先取りしたものかもしれません。どんな激変が訪れるにせよ、企業も個人も最適な行動を模索し続けなければなりません。そこで今回も与件を捉える有効性について考えてみます。

企業が与件を正確に把握するよう努めるのは必須です。それは、外部環境(前述のPEST分析における4つの要因)の変化の速さを前提に、自社を取り巻く状況を見越して備え、勝ち抜く戦略を立案し、実行することが未来を左右するからです。

経験則や成功体験は足かせになりかねず、変化の予兆を見逃すと後々不都合が生じます。過去に構築したビジネスモデルが通用せず、また、社内制度がそぐわなくなっている場合、形骸化した仕組みに捕われ思考停止しているとすぐに置いていかれてしまいます。そうした事態を未然に防ぐためにも、経営層、管理職が自社、部署、部門ごとに与件を常に把握し、行動計画に落とし込む作業が非常に重要です。

個人レベルでも同様です。仕事でも私生活でも上手くいかないことはありますが、現状とその先の捉え方でとり得る行動が変わってきます。社会構造や世代間のギャップ、世の中云々といった外部要因や、上司や同僚など他者のせいにし、前を向こうとしないのか。あるいは逆に「上手くいかないならやり方を変えてみようか」と自らの行動を見直し、裁量の余地がどの程度か把握して選択肢を整理し、実行するのか。中長期的に見て後者の方が成功しそうです。

ただし、裁量の及ばない対象を与件と捉え、その制約のもとで最善を尽くすとき、ストレスは避けられません。どうにも出来ないことと一度は対峙しなくてはならないからです。しかし、状況を受け入れると胆力が付き、対応力も上がっていきますし、打開できれば自信も高まります。考え抜いた行動の結果として痛い思いをしても、次に繋がる学びが得られます。「これは与件だが、これは違う。どうしたら良いかな」と自分がとれる行動を整理するだけでも、心理的な負担感は減るものです。

企業も個人も、与件を把握し、自らのケイパビリティやポテンシャルを見定め、最善策を検討して実行に移すことが成功へのカギです。それは経済学の知見が説くだけでなく、歴史が物語っています。

どんな状況においても与件を明確にし、「では、こうしようか」と前向きに考える習慣を身に付け、2019年も明るく活き活きと働いていきたいです。

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