Writingsコラム

キャリアの虹を描く(2)

高度成長期からバブル崩壊後の2000年くらいまで、ライフステージのイメージは分かりやすいものでした。一般的にキャリアを形成する上での理想的なモデルは、「より良い大学を出て、より良い会社に就職し、定年まで勤め上げる」と認識されていたかと思います。

翻って2019年現在、そのモデルを心底信じている人はかつてよりも随分と減っているでしょう。ビジネスパーソンの意識の変遷については、ここでは詳しくは触れませんが、バブル崩壊から現在までの期間、所謂「失われた」20年や25年の間、複合的な要因により社会構造や外部環境が変化し、企業のあり方も大きく変わりました。

リンダ・グラットン、アンドリュー・スコット(著)『ライフ・シフト ― 100年時代の人生戦略』(東洋経済新報社)でも、標準的な生き方(教育のステージ、仕事のステージ、引退のステージという3ステージ型の仕事人生)から、マルチステージを前提としたキャリア形成にシフトしていくことが提唱されています。

自らの経験と能力、そして「どのように生きていきたいか、働いていきたいか」という志向性への理解を深めること。自分にとって望ましい生き方、働き方を実現させるために、ステージ間の移行期に学び直すこと。人生を自ら切り開く姿勢を一貫して持つこと。同書ではそれらの必要性が説かれています。

今まさに職業発達理論の大家・スーパー(Super, D. E.)が提示した「キャリアの虹(ライフキャリアレインボー)」を自ら描き具現化していくことが一人一人に求められている。『ライフ・シフト』の主張はそう解釈できます。

これまで一般的とされていた虹のあり方(大まかに3ステージだった仕事人生)と、自分が志向するキャリア形成との違いを認識することで、望んでいる生き方と本心から求めている働き方がより具体的にイメージできるようになり、未来を見据える視座が得られます。(次回につづく)

アーカイブ

ページ上部へ戻る