Writingsコラム

宮城の多彩なこけし

日本の伝統的な人形の一つが、こけし。宮城県では、鳴子(なるこ)、遠刈田(とうがった)、弥治郎(やじろう)、作並(さくなみ)、肘折(ひじおり)と5系統の伝統的こけしが作られています。丸い頭に胴体という、非常にシンプルなシェイプ。基本的に木型の作成から彩色まで一人の職人で行われるので、作り手の個性も出てくるのだとか。幅広い世代にファンがいる奥深いこけしの世界を少しのぞいてみましょう。

江戸時代、お椀やお盆を作っていた木地師が、湯治場の土産物としてこけしを作り始めたのがルーツと言われています。「きでこ」「こです」「きぼこ」「こげし」など、さまざまな名前で呼ばれていましたが、1940年に東京こけし会総会において「こけし」という表記で統一することになりました。丸い頭に手足のない胴体が組み合わさった形が伝統こけしとして定義されており、地域によって特徴が異なります。

伝統こけしは、東北地方を中心に10〜12系統ありますが、特に鳴子、遠刈田、土湯(福島県)の3地域が、起源が古いとされています。肘折は山形県にありますが、肘折系統こけしは鳴子と遠刈田を織り交ぜて作られたと言われているため、宮城県産でも肘折系統の特徴を備えていれば肘折系こけしと呼ばれています。

こけしは江戸時代から子供へのお土産用、子孫繁栄の縁起物として愛されてきましたが、大正時代に入ってからはキューピー人形などの新しいおもちゃに競り負けていました。しかし昭和初期に民芸品、美術品としての価値が見出され、第1次こけしブームが起こります。戦後、高度経済成長期に国内旅行が盛んになり、温泉地の土産物としてこけしが買われていきます。これが第2次こけしブーム。2010年ごろから「こけし女子」と呼ばれる女性層がメインとなり、第3次こけしブームが起こり、現在に至っています。

形式が決まっている伝統こけしとは別に、自由な発想で作られているのが創作こけしです。胴と頭が一体化したダルマ型で、地域の名産品をモチーフにした、ずんだこけし、笹かまこけしなどのご当地名物もの、作家性の強いもの、企業の商品とコラボしたものなど、創作こけしの世界は幅広くなってきています。こういった創作系を含めたこけしは海外にも輸出されており、知名度は高くなっています。

神秘的なこけしの表情は、見る者の想像をかき立ててくれます。シンプルなものは時代を超越するとも言われます。昔も今もこれからも、こけしは末長く愛されることでしょう。

アーカイブ

ページ上部へ戻る