Writingsコラム

光害(ひかりがい)を知っていますか?

都会の明かりは賑やかで、イルミネーションなどは気持ちが華やぐものですが、その代わり、星空は見えにくくなっています。人間が照らす明かりが、環境に負荷をかけてしまっているのが光害。本来暗いはずである夜に光があふれ過ぎるとどんな問題が起こるのか、簡単にまとめてみましょう。

まず、過剰な光はエネルギーの浪費となってしまいます。宇宙から見える光は都市部に集中しており、いかに人間が明かりにエネルギーを使っているのかがよくわかります。防犯対策として、ある程度の明るさは必要ですが、必要な光量と目的以外の場所を照らす角度の調整でエネルギーはずいぶん節約できます。環境意識の高いヨーロッパでは、人感センサーを利用した街灯などを導入、イルミネーションのデザインも光と闇の対比を使うなど、過剰な照明を削減していく動きが始まっています。

過剰な都市の明かりのせいで星空が見えにくくなり、天体観測への悪影響が挙げられます。「自分は星に興味がないから関係ない」「星が見たいときは郊外へ行けばいい」と考えたりするかもしれませんが、限定された場所でしか天体観測ができなくなってしまうと、専門家しか星を見なくなってしまいます。それは天文学という学問のためにはそれは大きなマイナスです。子供の宇宙への興味も抱きにくくなります。一般の人たちが星空の美しさを知る機会を失わないことが、学問の発展の基礎になることを忘れてはいけません。

本来、夜は暗いものですが、夜が暗くないことで、動植物に悪影響を及ぼします。ほうれん草など葉物野菜は、夜間も光が当てられると成長が促進されすぎて売り物にならなくなります。また浜辺の街灯はウミガメが産卵するときの邪魔になり、孵化した子ガメが光によって方向感覚を狂わされ、海に戻れないという現象を引き起こしてしまいます。

明る過ぎる夜は、もちろん人間の活動にも影響を及ぼします。夜間、強い光を浴び過ぎると、体内時計が混乱を起こし、ホルモンバランスを崩します。不眠やうつ病、ガンなどに結びつくという研究結果が数多く出されています。

従来使用してきたナトリウム灯を減らし、LED照明を増やせばエネルギー効率もよくなり、明かりは減少するという考えから、LED照明は増えました。が、残念なことに人工衛星のセンサーがとらえる光量は、ほとんど変わりませんでした。衛星のセンサーはLEDの青い光を計測できませんから、結果、都市部は従来以上の明るさになっていると考えられます。

環境省は平成10(1998)年に「光害対策ガイドライン」を出しましたが、規制を行う具体的な法律はまだ作成されていません。これから先、私たちはもっと光と環境について考え、より有効な手段や技術を作り出していくことになるでしょう。

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