Writingsコラム

わからないから面白い縄文文化

2021年7月、北海道・北東北(青森、岩手、秋田)の縄文遺跡群が、国際教育科学文化機関(ユネスコ)の世界遺産委員会より世界文化遺産に登録されました。巨木6本の柱に三階分の床が作られている大型堀立柱建物が再現された三内丸山遺跡(青森)、円形の周堤墓が9基発見されたキウス周堤墓群(北海道)、石が環状に並ぶ大湯環列石(秋田)など17の遺跡群です。

しかし申請から登録まで非常に時間がかかりました。その理由は、縄文遺跡は構造物のほとんどが木製であるためです。時間が経過すると木は腐り、失われてしまいます。よって、発掘で見つかる遺構は穴だけ。価値がわかりにくい縄文遺跡は価値が伝わりにくかったというのが大きな理由です。

しかし縄文好きにとって。これこそが最大の面白さなのです。何もないところから、専門家の研究結果と想像力を組み合わせて、自分なりの「物語」を作り上げることに魅力を感じるのです。現代に残るわずかな痕跡から、古代の光景を想像していくのが縄文を楽しむ上での醍醐味です。

後世に残りやすい土器は、燃える炎のような装飾の火炎式土器が縄文文化を代表すると思われがちですが、これは新潟県・信濃川流域でしか発見されていない特異な様式。大体の縄文土器はミニマリズムが基本です。人や動物などを貼り付けたり、縄目をつけたりと、デザインは多種多様。どれも作り手が気持ちのままに形作ったような勢いが感じられます。

大きな眼鏡のようなものをかけた遮光器土偶に、柔らかに女性の姿をデフォルメした縄文のビーナスと呼ばれるもの、反対に非常にリアルなイノシシ像など、造形形式も多種多様なのが縄文文化の魅力です。しかし、これら土偶類は何のために製作されたのか、はっきりとわかっていません。だからこそ、祭祀のための道具だとか、植物などのフォルムを参考にした等、独自の考えを深めることができます。

造形としての美しさを愛でる、地域によって異なる文化の傾向を調べる、遺跡と天体の動きについての関連を極める……縄文文化にさまざまなアプローチを試みる人たちが増えてきています。難しい文献などは存在しない縄文時代。直感的に訴えてくる縄文の文化の一端を眺めてみるだけでも面白そうです。

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