Writingsコラム

ものづくりの福井県

福井県といえば、日本海からの海の幸、絶景の東尋坊、勤勉な県民性など、人によって抱くイメージはさまざま。実は製造業が昔から盛んだということは、あまり知られていないかもしれません。福井県がものづくりに長けた理由を紐解いてみます。

明治維新以前、北部は越前、南部は若狭と呼ばれていました。その昔、越前は和紙、漆器、包丁などの打刃物、陶器、タンス。若狭は塗り箸や、めのう細工など、各地域で多様な工芸品を発展させてきました。こうした工芸品が盛んになった理由は、雪深い豪雪地帯だからこそ。農閑期の副業として室町時代あたりから続いてきました。

江戸時代、北海道から北陸、大阪へと続く航路が確立され、北前船と呼ばれる大型帆船で物資が流通していきます。福井には敦賀港をはじめ4つの港があり、人とモノが行き交いました。そういったことから福井には「先取り」の気風が育まれていったのでしょう。明治維新後は繊維、メガネフレームなどを皮切りに、現在は塗料や界面活性剤などの化学製品、プラスチック製品、電子部品やデバイス、医薬品製剤など、多岐にわたる製造業が活躍しています。

特徴的なのが、一業一社といった形態の中小企業がメインであることです。自動車やロボットの部品、建設素材、ゴルフクラブなどのスポーツ用品、高機能繊維等々、どれも「この会社でなければできない」という技術の特化型企業が数多く集まっており、その分野ではシェアNo.1ということが珍しくありません。このことが影響しているのか、福井県の社長輩出数は38年連続全国トップを誇っています(※)。

デザイン分野では、「ものづくりの里プロジェクト」という行政や商工団体、産地が一体となって取り組んでいる計画があります。越前市にある「福井ものづくりキャンパス」では、クリエイターと企業を結ぶ役割を果たしたり、伝統工芸やクラフトワークを体験できるワークショップ、作品の展示、販売などが行われています。また鯖江市、越前市・越前町が主体となった「RENEW(リニュー)」では、伝統工芸品やメガネなどの工房見学やワークショップを体験できる場が創設され、コロナ禍が収まるのが待たれています。

福井県は、農業では兼業農家が多く、共働きが当たり前。貯蓄額は常に全国平均を上回るっているとか。古くは「越前商人は要領がよく、商才に長けている」と言われていました。伝統的にある「先取り」の気風と、これはと思ったら会社を起こすという行動力、男女ともによく働くという県民性が、福井のものづくりを支えているのでしょう。

※2020年帝国データバンクより

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