Writingsコラム

サンドイッチ、日本仕様にて着実に進化中

パンに具材を挟んだサンドイッチ。18世紀、英国の第四代サンドイッチ伯爵、ジョン・モンタギューがカードゲームの合間に食べるために用意させたものが始まりと言われています。しかしジョン・モンタギューは国務大臣として多忙で、カードではなく執務の合間に食べた……という話も。現在日本に伝わっているのは英国から伝わってきた、午後のお茶会(アフタヌーンティー)に淑女たちに供されていたティーサンドイッチがその原型と言われています。

とはいえ、パンに具材を挟む食べ物は世界中にあります。パンの上に具材を載せるオープンサンドイッチ、薄いパンで具材を巻くラップサンド、パンの間に切れ込みを入れて具材を挟むピタサンドやホットドッグ等、こうした食べ物は世界各地に多数存在します。味も食事となるもの、デザートになる甘いものなど多種多彩。主食とおかずを一緒に食べるという手法は、無限にあるといってもいいでしょう。

中でもパンを主食としている地域では、日本人にとって思いがけない組み合わせを実践しているかもしれません。例えば、サンドイッチの語源となった英国ではトーストしたパンを、バターを塗った2枚のパンで挟むというトースト・サンドイッチというものがあります。19世紀ヴィクトリア女王の時代にカリスマ主婦として活躍したビートン夫人の料理書に掲載されている滋養食なのだとか。

日本人は食に対しては貪欲で、風変わりなスタイルもどんどん受け入れています。イングランドの庶民が好むフライドポテトをバンズで挟むチップバティもハンバーガーチェーン店のメニューに登場。期間限定でしたが、一部で好評だったという話ですから、そのうちアイルランドで人気のあるポテトチップスを挟んだクリスプサンドイッチが日本上陸を果たすかもしれません。アメリカ由来の甘いドーナツにチーズやチキンなどの具材を挟んだドーナツサンドイッチも、最近、大手食品チェーン店から発売され、「罪悪感の塊」として好評のようです。次はさらに罪悪感を感じそうなマフィンに具材を挟んだマフィンウィッチが流行するのでしょうか。

日本のサンドイッチで長らくブームになっているのは、ホイップクリームとフルーツを挟んだフルーツサンド。中でも断面の美しさを「萌え断」とし、シャインマスカットや丸ごとみかんなど、見栄えとおいしさを追求しています。また、最近はホットサンドが大人気。ホットサンドメーカーを買って自分好みの組み合わせを追求する人も多いようです。

日本独自でしかもメジャーな具材といえば、焼きそばパンでしょうか。炭水化物と炭水化物の組み合わせが不思議と思われがちですが、実は日本人は炭水化物同士の組み合わせに違和感はあまり持っていないようです。ラーメンにチャーハン、餃子にご飯等々、ごく普通に生活に馴染んでいます。ドイツでは炭水化物であるポテトサラダはサンドイッチにしないようですから、許容範囲というのは文化圏ごとに違うのでしょう。いずれにしても日本人は外国生まれであるサンドイッチを日本人好みにカスタマイズし続けてきました。コンビニにずらりと並ぶサンドイッチの多彩さが、それを雄弁に物語っています。

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