Writingsコラム

公開情報を読み取る手法、OSINT(オシント)

OSINT(オシント)という言葉をご存知でしょうか。これはopen-source intelligenceの略語で、一般に公開されている情報を読み解く手法のことです。インテリジェンスは、知能、知性、機密情報、情報活動という日本語に翻訳できますが、データ(材料、資料、論拠)やインフォメーション(情報、知識)とは意味合いが異なります。

インテリジェンスとは、データやインフォメーションを目的に役立てるため分析、補完したものです。公開情報とは、WebサイトやSNS、ニュース記事、官公庁からの公表データ、企業から出されるプレスリリースなど、誰でも入手できる媒体から発信されるもので、機密事項は含まれません。これらを調べ、突き合わせていくことで、意図や目的などを分析していくのがオシント。インターネット時代以前より、国家間の諜報活動の一環として行われていました。

インターネットの普及で個人発信者が激増したことから、現在ではより公開情報分析の重要性が高まっています。こういった情報収集は、簡便に行えるシステムがいくつも公開されており、誰もが大量の情報を処理できる時代となりました。しかし、整理されていない情報はただのデータでありインフォメーションです。総合的に情報を読み解くインテリジェンスの必要性は非常に高まっています。

公開される情報の量も格段に増加しています。近年、信頼できる公表データを発信する独立系国際調査グループ、非営利組織がたくさんできましたが、実は個人が発信するSNSや検索エンジンの検索結果も情報源となります。どうやら国家間のスパイ活動も、人を介した諜報活動よりも、優秀なIT技術者の採用に力を注いでいるのだとか。機密情報を人間関係から引き出すことを重視した時代は一昔前のことのようです。

ビジネスにおいても、情報収集の先にあるオシントの重要性は高くなっています。競合する他社の情報を収集し、分析して将来の戦略を組み立てるといった積極的活用面。自社の重要情報を迂闊に公開しないなどの防衛面。二つの側面をバランスよく運用していくことが求められています。

オシントに必要なのは、有用で必要な情報を判断できる能力です。偽情報にだまされない、感情的な情報は疑うべきである、似たような情報の集積を鵜呑みにしない等、気をつけるべきことはたくさんありますが、何よりも必要なのは、大量の情報を処理していく中で見失わないようにする冷静さなのかもしれません。

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