Writingsコラム

和歌山県・白浜町は「浜」を愛する

和歌山県南部にある白浜町。その名を聞いて、誰もが白砂が美しい白良浜(しららはま)を思い浮かべるかと思います。風光明媚で温泉もあることから、658年に斉明天皇と中大兄皇子が訪れたのを皮切りに、持統天皇、文武天皇など歴代天皇や貴族が湯治に来ていました。白浜温泉は、兵庫県の有馬温泉、愛媛県の道後温泉と共に日本三古泉と言われています。

白浜の代名詞ともいえる白良浜は、ゆるやかな弧を描く真っ白な砂浜が特徴の620mの海水浴場で、周囲を旅館やリゾートホテルが囲んでいます。浜の白さの秘密は、珪石砂岩(けいせきさがん)。まるで雪のようだと言われるこの砂は、ガラスの原料に使われるのですが、宅地開発などが進んだせいで、昭和の終わり頃から河川からの珪石砂岩の供給が減り、白浜の面積が削られ続けていました。

そこで和歌山県は対策として「養浜(ようひん)」という手段をとります。流出した砂を補い、痩せた砂浜を取り戻すという計画です。国内で似た砂を探しましたが、白良浜の白い砂にかなうものはありませんでした。そこで海外に目を向けたところ、オーストラリアのパースの砂が最も似ているということで、12年間で延べ14万トンの砂を輸入し、砂を足していきました。

砂が流出しないよう、白浜町では突堤を設けたり、風で砂が飛ばされないようにネットを張ったりと、努力を重ねています。また、放置されたゴミに白砂がついて、捨てられるときに白砂が失われてしまうという悪循環を断ち切るために、ゴミ拾い活動も行っているとか。訪れた際、ゴミの置き捨てをしないことが、白い砂を守ることにつながることを心得ておきたいものです。

白浜にはパンダ好きにはたまらないアドベンチャーワールドがあります。現在、日本最多7頭のパンダを飼育。開園は1978年で、ワールドサファリという名称でスタートしました。翌年には遊園地が併設されましたが、一時期低迷。1983年に現在の名称変更した後、80年代中盤からのラッコブームに乗って徐々に盛り返し、1994年にジャイアントパンダの永明(えいめい)と蓉浜(ようひん)がやってきて、盛り上がりが加速していきます。

蓉浜は残念ながら短命で、1997年に亡くなりましたが、のちにやってきた梅梅(めいめい)が双子2組を含む計6頭を産み、続いて良浜(りょうひん)が3組の双子を含む9頭を出産。パンダの名前には全て「浜」がついており、白浜生まれを強調しています。生まれた赤ちゃんパンダの名前は毎回公募されていますが、採用されるのは「◯浜」のパターン。見事この1字を当てれば、名付け親になることができます。父親の永明は1992年生まれで、人間でいえば80歳後半だとか。これからの赤ちゃん誕生の可能性を信じ、名前を想像するのも楽しそうです。

白浜は、他に海に突き出す大岩の千畳敷、高さ50m断崖絶壁が2kmに渡って続く三段壁、島の真ん中にある岩穴から夕日をのぞくことができる円月島など、海沿いに写真映えするスポットが数多く、夏に楽しみたいリゾート地です。海とパンダと温泉が揃う白浜は、多くの旅人を惹きつけてやみません。

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