Writingsコラム

判断するときは、認知バイアスを意識して

ふと過去を振り返ると、「なんとなく」で決めてしまい、合理的な判断をしていなかったことはありませんか? その原因は、認知バイアスという「思い込み」によるものなのかもしれません。認知バイアスとは一体どういうものなのか、興味深いものをピックアップしてみましょう。

実は、認知バイアスにはたくさんの種類があります。好感度の高いタレントが商品を宣伝するといい商品だと思うような「ハロー効果」に、大勢の人が選ぶものは良いものだと考える「バンドワゴン効果」など、広告宣伝に利用されるので、よくご存知だと思います。自然災害などで自分だけは被害に遭わないというような危険性を客観視できない「正常性バイアス」や、警報が出ているけれども皆逃げないから大丈夫だと思う「同調性バイアス」は、災害時には大きな被害をもたらします。

「自己奉仕バイアス」は、成功したことは自分の能力が優れているせいで、失敗は他人や社会情勢のせいと片付けること。「確証バイアス」は自分が望む結論が先にあるため、実験や検査の結果などを無視してしまうことです。自分が属する会社や組織が絶対的に優れていると思い込む「内集団バイアス」は、外部に対して見下したり差別的な態度をとりがちです。これらは自己分析と客観的判断を軽んじる行為で、結果的に自己の成長を妨げてしまうことにつながります。

ある事件や事故が起こったとき、「こうなると思っていた」などと根拠なく口にする人は「後知恵バイアス」に陥っていることが考えられます。死者が多かった事故だったのに、生存者の意見だけで被害や規模を勝手に判断する「生存者バイアス」というものもあります。社会体制や教育のせいで、年齢や性差だけで優劣が決まっていると思い込む、隠された偏見「アンコンシャス・バイアス」に関しては、近年、特に問題視されています。

こうした意識的、無意識的な思い込みを排除するには、「なんとなく」という感覚に無条件に従うのではなく、正確なデータに基づいた確率や統計を面倒がらずに検証することが求められます。また、たくさんの人と接する経験を積むことで、世の中には多種多様な価値観があると学ぶことも必要です。同時に、そういった人々の多様な意見を聞き、理解していくことは、客観性を育てる糧となります。これらを習慣化することが、自分に不都合な事実や情報から目を背けないことにつながります。

人はいつも正しい判断をできるわけではありません。時には判断力が鈍ったり、間違えた選択をすることもあるでしょう。認知バイアスという、誰もが陥ってしまいがちな思い込みの仕組みを知れば、大切な局面での判断で間違いの確率を減らすことにつながります。危険な思い込みを可能な限り排除し、より良い判断ができるようになればいいですね。

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