Writingsコラム
やり抜く力、GRIT理論

困難な状況に直面した時、投げ出したい気分に陥るのはよくあることです。努力は無駄なのではないか、自分に自信がないなど、ネガティブになってしまった気持ちを奮い立たせ、難しい局面を克服していくにはGRIT(グリット)理論が役に立ちます。ビジネス書などでもよく目にするGRIT理論について、もう一度確認しておきましょう。
GRITは日本語では「やり抜く力」と訳されています。「Guts(ガッツ)困難なことにも立ち向かう力」「Resilience(レジリエンス)立ち直る復元力」「Initiative(イニシアチブ)自ら取り組む自発性」「Tenacity(テナシティ)最後までやり遂げる執念」の4つの単語の頭文字からの造語です。提唱したのはアメリカ・ペンシルバニア大学のアンジェラ・リー・ダックワース教授です。
教授は、世界的に有名なプレゼンテーションの場TEDで「大きな目標や目的に対して、長期的に高い情熱とエネルギーで取り組むことができる能力」であると発表しました。ここから「粘り強く、努力し続ける大切さ」が世界的に話題となったのです。
計算力や読解力など、テストで測ることのできる能力は認知能力と言われ、努力や継続は計測することができないため非認知能力と分類されています。ダックワース教授は大学で、認知能力を測るIQが高くても成績が良い生徒であるとは限らず、IQが低くても目的意識を持ってやり抜く粘り強さがある生徒は優秀な成績であることに気づき、GRIT理論にたどり着きました。昔から感覚的に知られていたことではありましたが、努力や継続の重要性を科学的根拠に基づいて証明したことから、「やはりそうなのだ」と皆が納得したのです。
成功している経営者やアスリートは、環境や才能に恵まれているだけでは成果を出せないことはよく知られています。GRITの4要素、困難に陥り、状況に負けそうになっても立ち直り、粘り強く努力し続けることが成功のために必要なことなのです。
では、「やり抜く力」を育てるにはどうしたらいいのでしょうか。よく言われているのは、苦手だと思っていることよりも、得意なことや夢中になれることであれば、努力を積み重ねていくことができるということ。その際、目標設定はいきなり高くしすぎないことが大切です。小さな成功体験を積み重ね、自信をつけていくことで、あきらめない姿勢が身についていきます。その際、同じことをやり続けるのではなく、新しい挑戦に取り組むことをプラスしていくのが良いようです。目標の立て方が上手な人を見本にするのもいいかもしれません。
やり抜く力はいきなり身につくものではありません。が、力は誰もが兼ね備えています。長期的な目標を定め、少しずつステップアップしていく計画性も重要です。毎日コツコツと努力を重ね、あきらめない心を育てていきましょう。