Writingsコラム

群馬県高崎市と工場

群馬県に有名な企業の工場が多いのはご存知でしょうか。中でも高崎市にはケロッグやハーゲンダッツといった外資に、ニップン冷食(日本製粉)第一屋製パン、クラシエフーズや大塚製薬など、大手メーカーの食品工場がたくさんあります。特にハーゲンダッツの工場は、アメリカ、フランス、そして日本と、世界に3つしか工場がなく、高崎工場がアジア圏の生産を担っているというのは有名な話です。

もともと高崎は「商都」と呼ばれていました。中山道の宿場町で、ここから新潟県長岡に通じる三国街道へと分岐する交通の要所。人とモノが行き交う場所でした。ちなみに三国街道は越後(えちご/新潟)、信濃(しなの/長野)、上野(こうずけ/群馬)を結ぶ街道で、群馬名物「上毛かるた」では、「関東と信越つなぐ高崎市」と詠まれています。また、利根川を使った水運の発着点でもありました。

明治になって、外貨獲得のために絹糸が海外へ売られる際、産地である群馬県と港のある横浜方面へつなぐ交通網が整備されます。1884年には中山道に沿って高崎・上野間の鉄道が開業。その後、複数の路線が乗り入れます。地の利の良さから戦時には高崎には火薬工場ができ、周辺には飛行場や軍需工場も数多くありました。そして戦後は高速道路が整備され、1976年には上越新幹線が開業。より便利になった高崎には、従来あった化学関連工場に加え、食品工場が集まってきます。

ハーゲンダッツの工場の場合は、原料の仕入れ先であるタカナシ乳業が近かったという点も選ばれた理由の一つだったようです。また高崎は、昔から小麦の産地でもあったため、日清製粉の製粉工場がありました。しかし30年ほど前に、製粉から冷凍食品にシフトしています。海外から原料を輸入している場合、工場は海岸沿いに建てられるのが普通です。事実、日清製粉は、高崎の製粉工場を冷凍食品に転換した後、製粉工場を千葉と横浜に置いています。

味の素の冷凍食品工場も高崎市近隣の大泉町にありますが、内陸であるのに原材料の輸入比率が高い食品加工工場があるのは、なんといっても交通網が充実しているからです。高崎から東京、横浜への物流はもちろん、新潟港からの海外航路はグローバル企業が利用しているようです。新潟港と同程度の距離にある茨城・常陸那珂(ひたちなか)港の利用も視野に入れられているとか。

地震や水害の少ない自然環境も幸いし、食品だけではなく、機械部品の製造工場や、繊維、木工など製造業が強いというのが群馬経済の特徴です。群馬発祥の有名企業もヤマダ電機、ベイシアグループ、ワークマンなど数多くあり、「稼ぐ力」の強さが際立っています。

群馬県を車で走っていると、名の知れた企業の工場をたくさん見かけます。ドライブ中にいくつ見つけたか、数えてみるゲームも面白そうですね。

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