Writingsコラム

雑穀を取り入れてみよう

体にいいということで、健康診断前にご飯を白米ではなく雑穀入りにしてみたことはありませんか。時折、もち麦や発酵玄米など、雑穀ブームがやってきたりもします。雑穀は健康にいいだけではなく、食糧危機の緩和にも貢献できるとか。可能性を秘めた雑穀について、詳しく探ってみましょう。

まずは、何が雑穀かということに関してですが、代表的なのがヒエ、アワ、キビなどの小さい実をつけるイネ科の穀物です。これらは英語でmillet。イネ、コムギ、トウモロコシは主穀(main grain/major grain)とされ、二つを合わせて穀物(cereal)とするのが英単語としての区分です。しかし雑穀の定義は国や時代によって変わるもので、現在の日本での定義は「主食以外に日本人が利用している穀物」です。オオムギやライムギ、ハトムギ、トウモロコシなど日本で主食として利用されていないものや、赤米や黒米、精製されていない玄米なども雑穀に含まれると、日本雑穀協会が定義しています。

ヒエやアワ、キビは古くから日本で食べられていました。コメやムギが普及していなかった地域では、これらを主食として食べていた歴史もあります。ヒエは「冷え」、つまり寒さに強い穀物。アワは阿波国(徳島県)の名産品であったことに由来するようです。もっちりとした食感と甘みがあるため、あわぜんざいなど、あんこと一緒に食べられることも多いものでした。キビは吉備国(岡山県)生まれのようで、桃太郎がお供に配ったきび団子が有名です。キビもモチモチ食感で甘みがあるため、昔から団子菓子によく用いられていました。これら3種の雑穀に、コメとムギを加えた5種の穀物は、主要な穀物という意味で「五穀」と呼ばれています。

精製されている米を食べ慣れた現代日本人にとって、雑穀だけの食事は少々食べにくいものです。が、白米に混ぜて食べるとハードルが下がるため、もち麦や十六穀米、赤米などが健康効果を高める食材としてスーパーに並んでいます。雑穀を混ぜると、白米だけよりも血糖値の上昇が抑えられ、食物繊維が摂取できるために腸内環境改善や排便を促してくれます。

玄米が体にいいとは皆知っていますが、食感がボソボソしているという欠点があります。そこで登場したのが発酵玄米。別名、酵素玄米や寝かせ玄米とも呼ばれていますが、玄米と小豆と塩を合わせて炊いた後、数日かけて発酵させたものです。モチモチした食感で玄米よりも食べやすく、発酵しているので乳酸菌がたっぷり入り、ビタミンやアミノ酸などもアップ。腸内環境の改善に役立つ食べ方です。ただ、3〜7日間保温し続け、時々かき混ぜなければならず、雑菌の管理には注意が必要ですから、パック入りの需要が多いようです。

2023年、国連食糧農業機関(FAO)が「国際雑穀年」に制定。2024年にはインドの雑穀讃歌「Abundance in Millets(豊かな雑穀)」がグラミー賞を受賞するなど、世界的に雑穀に注目が集まりつつあります。なぜインドが雑穀を讃えるのかといえば、世界の雑穀生産量の41%を占めているからです。アフリカ全土を合わせても45%ですから、その生産量がいかに大きなものかわかると思います。

雑穀は栄養価が高く、干ばつや害虫などにも強い丈夫な穀物です。気候変動や人口の偏りなどで世界の食糧事情は不安定化しており、飢餓問題も心配されています。だからこそ国際食糧農業機関は雑穀に着目し、その良さを広めることに注力しているのです。日本でも、雑穀はたびたび人命を救ってきたものですし、現代人の健康維持にも良いものですから、積極的に取り入れていきましょう。

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