Writingsコラム

現状維持バイアスと権利意識(2)

「変わりたくない」という現状維持バイアスの心理以上にやっかいなのは、「もっと楽をして多くを得たい」という権利意識です。
なぜなら、その利益追求の行動は他者の迷惑になることがあるからです。もっと楽をしたいという気持ちがあると、本来自分がやるべきことを他者に押し付けたりします。
「この仕事はこうでないとできない」や「以前はこれが当たり前だった」というような主張を延々と繰り返す、万事が交渉モードな人が時々いますが、その言葉の根底にも「もっと楽をして多くを得たい」という意識があるでしょう。

そのような極端な人は他者の時間とエネルギーを奪う傾向があり、仕事の進捗を妨げます。そして、一度主張が通ると言動がエスカレートしていきます。
やがて歯止めが効かなくなると周囲からもそういう人だと評価されるようになり、「情けは人の為ならず」の真逆の状態を招きます。平常時でも、何か困ったときにも、誰からも協力を得られないという状態になるのです。
権利を振りかざして好条件を求めるのは、現状への不満や不安の裏返しなのかもしれません。
一方、自己研鑽が習慣化しているビジネスパーソンは、些末な主張を繰り返すことはしません。時間もエネルギーも生産的なことのみに投入したいという気持ちが強いからです。そのため、他者の時間やエネルギーを奪うようなこともしません。
正当な理由があるならば、権利を巡る交渉はすべきです。しかし、それにも限度やタイミングがあります。
自分がかたくなに主張している権利を相手はどう捉えているのか、度が過ぎやしないか、それ以前に自分は主張できるほどの成果を上げているだろうか。
ビジネスにおいても、原則は「情けは人の為ならず」です。人間誰しも楽をしたくなることはありますが、自分自身の働き方を省みて、他者本位に行動する癖をつけたいものですね。

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