Writingsコラム

営業活動のエッセンス(1)

昨今、ビジネスへの人工知能(AI)の導入やオートメーション化がますます進むということが言われています。それに伴い「機械に仕事を奪われないためには、人間に固有の能力や感性を磨くことがカギになる」といった論調を目にすることが増えています。そのようなサバイバビリティの観点から、対面でのコミュニケーションやホスピタリティがこれまで以上に重要になるのではないかということも言われています。

今回はコミュニケーションと密接な「営業力」について考えてみます。昔から、営業活動においては誠意や熱意が大事だと言われています。ビジネス上のコミュニケーションの真価は、その相手のことが信じられるかどうか、製品やサービス、提案内容が本物であることが伝わってくるかどうかで決まるからです。

AI導入の有無に関わらず、営業力があるに越したことはありません。「営業力がある」とはどんな状態を指すのでしょうか。無理に売ろうとしなくても買ってくれる、指名買いしてもらえる、「あなたと仕事したい」と言ってもらえるなど、ビジネス上の関係が信頼に基づく状態である場合、その人には営業力が備わっていると言えるでしょう。どうすればそのような関係を築けるのか、誰もが秘訣を知りたいと考えます。

営業活動では、ときに「売りたい!」という気持ちが先走ってしまうことがあります。逆効果だと理屈では分かっていても早く結果がほしくて焦り、尋問のような口調で決断をせかしてしまった経験は誰しも一度や二度はあるのではないでしょうか。知識や経験が足りていないのに結果を出さなければならないとき、そういった失敗をやってしまいます。それは相手の事情を無視した一方的な主張に過ぎず、コミュニケーションとは言えません。

営業活動のエッセンスとは、「対面している相手本位の、相手ファーストの姿勢があること」です。言うのは易しいのですが、自然に行なうことは簡単ではありません。クライアント、消費者やユーザーの抱えている課題や問題、興味関心は何なのかをいつも真摯に考えていなければなりません。そして、その課題解決に向けて自分は何を提供でき、どのように貢献できるのかというソリューションの視点が欠かせません。

「望む結果はその先にある」と自制し、決して焦らずに自分の頭でどれだけ相手の利害について検討し接することができるか、営業の成否はその姿勢にかかっています。(次回につづく)

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