Writingsコラム

マインドフルネスの効能(2)

マインドフルネスはストレス解消に寄与し、集中力や生産性の面で効果があると言われています。現代人が抱えるストレスの要因としては、情報機器によって細かな意思決定や選択に常に迫られていることも挙げられるでしょう。

消費者行動論や行動経済学の知見によると人間の情報処理能力には限界があり、社会生活でも個人生活でも様々な意思決定が続くと知覚的加重負担(情報量が多過ぎて負担に感じる状況)になってしまうのだそうです。そのため、人間は脳への負荷を軽減するために決定を先延ばしにしたり、選ぶのを諦めたり、適当に解釈して処理したり、一旦棚上げしてしまったりするとのことです。日頃の行動を振り返ると思い当たる節がありますし、知覚的加重負担がパフォーマンスを左右し、巡り巡って企業の業績にも影響するであろうことは想像できます。

ところで、人間の進化の過程において、不安感は生存競争を勝ち抜く上で重要でした。近い将来に対して不安や恐怖を感じるがゆえに外敵からの攻撃に備え、身を守る術を講じることができたのです。そのため、不安感それ自体は良くも悪くもなく、人間に備わった個体保存や防衛本能の一部とも捉えられます。

ビジネスの場では生命が脅かされることをいつも想定しているわけではありませんが、人間の機能的特性として不安感や恐怖心が備わっている以上、追い込まれた状況になるとストレスは増します。例えば、何かの締め切りが迫ってくると落ち着きがなくなり、現実逃避したくなったりします。一方、ギリギリではなく余裕のある時点で準備を開始すれば腰を据えて取り組むことができ、締め切りにも間に合うでしょう。そのような期限から逆算した行動計画が功を奏すると手応えを感じ、成長に繋がります。要は不安や恐怖との向き合い方、仕事における緊張状態の捉え方が重要です。

マインドフルネスに効果がある理由は、バランスが乱れがちな自律神経系を整え、緊張を解きほぐす作用があるからです。交感神経が優位な状態が続くとドキドキしてしまい、意思決定に誤りが生じ得ます。頭が上手く働かなければ適切なタイミングで正しい優先順位のもとで選択できなくなります。そこで、例えば10分ほどマインドフルネスを行い、多くの情報が混在していて一杯一杯な意識をリセットします。あれこれ考えるのを一旦止めてリラックスすることで精神的なタガや認知の歪みが修正され、現実の捉え方や認識の仕方がフラットになり、また仕事に向き合う気持ちが湧いてきます。

現代人は疲れていますが、脳を上手に使うよう心掛けることで活力を取り戻せます。自らの思考や認知のクセを理解し、マインドフルネスをはじめ瞑想や自己催眠、短時間の睡眠など、自分に合ったお気に入りの方法を日常的に取り入れ、意識を良い状態にコントロールしながら元気に働いていきたいものです。

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