Writingsコラム

マインドフルネスの効能(1)

ここ数年、マインドフルネスという言葉を目にするようになりました。以前、シリコンバレーを中心に流行しているという内容の記事を読み、意外さを感じた反面、なるほどという納得感もありました。米グーグルなどがマインドフルネスを社員研修に取り入れ、メンタルヘルスや労働生産性の面で効果が上がっており、日本でも徐々に認知が広がってきているということが書かれていました。

そして最近、社員の心身の健康維持や生産性の向上に留意している日本企業が、マインドフルネスの研修を希望する社員に提供していて好評だという記事も目にしました。

そもそもマインドフルネスとは何でしょうか。ビジネスの文脈では真新しい言葉ですが、座禅や瞑想、自己催眠等と同様に心身を深くリラックスした状態にし、いま現在起きている内的および外的な経験、つまり「いま、ここ」に注意を向けることで脳の疲労を軽減させ、集中力を回復させる方法と紹介されることが多いようです。自分自身を癒したり気づきを得ることが目的の内観や認知療法といった方法論のエッセンスを、ビジネスの現場で役立つよう応用した取り組みとも理解できます。

さて、そのマインドフルネスがなぜ取り入れられているのか、その理由や背景は社会経済状況と密接でとても興味深いです。やはり、技術やテクノロジーの進化が早くビジネスの興亡が激しいことから、企業には強い危機感があり、個々のビジネスパーソンに緊張感や不安感などストレスが常態化していることが理由だと考えられます。

人間は緊張や不安があると交感神経が優位になり(副交感神経劣位となって自律神経系のバランスが乱れ)、その状態が続くと落ち着いて物事に向き合うことが難しくなります。周囲の環境からも影響を受けますので、職場にギスギスした雰囲気が蔓延していて張りつめると、焦りからミスも増え、生産性は総じて落ちてしまいます。

時と場合によってはプレッシャーや緊張感は良い作用をもたらしますが、いつも不安を抱えてピリピリしていては仕事になりません。前向きで柔軟な発想は、リラックスした状態やぼんやり散歩しているときなどにふっと湧くことが多いと言われています。マインドフルネスは人間のそのような性質にプラスの効果があることが着目され、また、働き方改革の一環としても研修に取り入れる企業が増えているようです。(次回につづく)

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