Writingsコラム

経済回復の主軸グリーンリカバリー

新型コロナウィルスの流行で世界的に停滞することになった経済。この立て直しのために、脱炭素など環境問題を一緒に解決しようという取り組みをグリーンリカバリーと言います。

環境問題に最も敏感なヨーロッパが推進するのは、気候変動対策を中心とする「欧州グリーンディール」という政策です。2050年まで温室効果ガス実質ゼロという目標のために、雇用を創出しながら風力などの再生可能エネルギーの強化、エネルギー貯蓄技術、CO2の回収技術、水素エネルギーの活用などに対して、巨額の炭素予算(カーボンバジェット)を用意しました。

アメリカのバイデン大統領も同様にインフラ投資を行うことを決定しています。鉄道など公共機関の動力源をクリーンエネルギーに。電気自動車への切り替え、再生可能エネルギー施設の大幅増設を打ち出すなど、この分野での株価は上昇中です。

欧米に比べ、まだ政策目標がはっきりしない日本ですが、実現可能で世界市場に打ち出しやすい分野として言えるのは、CO2回収技術と蓄電技術です。

CO2を炭素源として利用して、燃料や化学製品を作り出す有価転化技術に取り組むのはIHIや三菱重工、東芝、旭化成など、日本を代表する重化学工業。鹿島建設は建築中のコンクリートにCO2を吸収させる技術を実用化に向けて開発中です。いずれにしてもエネルギー効率を上げたCO2削減は、すでに日本は最高水準にあるため、新しい技術の開発が必須となっています。

蓄電技術に関しては、現在広く使われるリチウムイオン電池を研究開発し、市場を牽引してきた日本ですが、次世代の蓄電技術を開発中です。例えば古川電気工業では、今まで以上にコストが安く、導入が容易なバイポーラ型蓄電池を実用化に向けて研究中。村田製作所はより寿命を長く小型化に向けた研究開発を、トヨタ自動車はEV向け電池を準備中など、ここでも世界的企業が力を入れています。

経済回復はもちろんですが、世界は持続可能でサーキュラーエコノミー(循環型経済)を念頭に置いた社会・経済モデルへと動いています。今までの「資源を消費し、捨てる」というシステムからどう転換していくのか。実効性と迅速さが問われていると言えるでしょう。

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