Writingsコラム
繊維リサイクルへの取り組み

ユニクロやGU、H&Mなど有名アパレルメーカーや、家具雑貨を扱うニトリなどが衣類やカーテンのリサイクルに取り組んでいることはご存知かと思います。また、回収サービスを利用したことがある人も増えているのではないでしょうか。これらの繊維はリサイクルされると言われていますが、それが進んでいるのかどうかは、よく分からないかもしれません。繊維リサイクルの現状と問題点を探ってみます。
アパレル産業は、移り変わる流行と供給に応えるため、恒常的に在庫問題を抱える業界です。生産の過程で水を大量に使用し、化学物質も多く使われます。そのため環境に対する影響は大きく、繊維・アパレルは世界第2位の環境汚染産業と言われています。参考までに第1位は石油産業です。
ここ20年で、トレンドを押さえた服を安価で販売するファストファッションが普及しました。そのため服の着用期間は大幅に短縮され、大量の衣類が廃棄されています。化学繊維の原料はプラスチックですから、衣類の廃棄によって土壌や海洋は汚染されています。そして生産コスト削減のため、海外の現地工場の労働者が劣悪な環境で、低賃金で働かされています。持続可能な開発目標SDGsに反している事項が複数にわたって含まれているのも、アパレル産業の大きな問題点です。
環境規制を進めているEUでは、2023年12月にアパレル産業の未使用繊維の廃棄禁止規制を採択しました。現段階での廃棄禁止の対象は「未使用品の繊維」とされていますが、将来的には他の製品にも適用される見通しで、EU圏内に拠点を置く中規模以上の企業が取り組むことが求められています。またリサイクルしやすい持続可能な製品設計を促進する「エコデザイン規制」という新ルールも、製造業の重点製品としてアパレル・繊維製品に適用されています。将来的に日本もそれに準じていくことは間違いなく、グローバルに展開する大手アパレルは、日本国内でも積極的に取り組む姿勢を見せているのです。
繊維のリサイクルは主に3つの手法で行われています。マテリアルリサイクルは、布から繊維をばらして自動車の防音材に使うなど、繊維という素材の特性を変えずに次のリサイクル品の原料とするやり方です。ケミカルリサイクルは素材を分子レベルに分解し、生成した後に化学合成・再製品化する手法です。不純物を除去することができるため、石油由来の新品に限りなく近い品質を実現することができますが、コストが高く、低減が求められています。サーマルリカバリーは、衣類と可燃ごみを一緒に焼却し、発生した熱を発電や温水プールなどに利用する手法で、繊維の種類を選ばないことから、受け入れやすいリサイクル方法となっています。
多くの自治体で行なっている回収ペットボトルからのリサイクルは、かなり進化しています。ペットボトルはポリエステル繊維と同じポリエチレンテレフタレートを原料としているため、再生利用しやすくなっています。国内企業では、東洋紡STC、東レ、ユニチカトレーディングなどが取り組んでおり、ポリエステル繊維のリサイクル素材が市場に流通しています。
とはいえ、まだまだ繊維リサイクルは不十分であるのが現状です。リサイクルを前提とした繊維の開発、不純物除去の技術の開発、ペットボトルだけではなく、衣類の回収率も上げていくことが必要になっています。私たちユーザーも、リサイクル可能な素材を選ぶ、リメイクなどで長く衣類をき続けていくなど、環境に配慮した消費行動が求められています。