Writingsコラム

マーケティングとブランディング(1)

当社のサービスはデザインとマーケティングに特化しております。それらと密接に結びつくものにブランディングがあります。近年、デザイナーやマーケターの人材紹介に際して、能力や経験に加え、ブランディングへの理解が重要となるケースが増えています。

今回はマーケティングとブランディングについて考えてみます。というのも、この二つはしばしば混同されて語られることがありますが、厳密には異なる概念です。それぞれに積み上げられた研究があり、様々な研究者が定義付けに取り組み、また多くの実務家が方法論を検討、実践し、その説明や解釈は日々更新されています。

より一般的なマーケティングの定義としては、「需要、すなわち消費者・顧客のニーズを創造・開拓し、拡大するための活動」が挙げられるでしょう。また、故ピーター・ドラッカー教授は、「マーケティングとは、最終成果の観点、つまり顧客の観点から見たビジネスそのものである」と述べています。

一方、ブランディングの定義として、ブランド研究の大家であるデービッド・アーカー教授は、「戦略に基づくブランド・ビジョンを実施するためのプロセスとスキルを伴う組織的な取り組み」と述べています。また、ブランドコンサルティング大手のインターブランド社は、「あらゆるビジネス活動をマネジメントし、ビジネスのアセットであるブランドの価値を最大化することを目指す活動」と説明しています。

マーケティングとブランディング、各々が内包する要素として、あるいは必要条件のような位置づけとして、イノベーションが併せて語られることも多いです。

例えば、ドラッガー教授は、「イノベーションの目標を達成するためには、体系的な反復作業が求められる。この反復作業をマーケティングの実践と呼ぶ」と述べています。また、「イノベーションのジレンマ」で有名なクレイトン・クリステンセン教授は、「市場セグメンテーションを実践し、商品イノベーションを検討しなければならないマーケターの役目は、顧客の実生活において自社の商品が雇われる可能性、つまり、どのようなジョブ(jobs to be done=片付けるべき用事)が発生するのかを理解することである」と論じています。

以上のそれぞれの定義や説明は論理的であり、言葉として理解できます。ただ、実務レベルに落とし込んで日々の業務に反映させるには、表現がやや難解というのが正直なところです。

実務家が効果的にマーケティングとブランディングに取り組むには、自らの言葉で簡潔に説明できるくらい本質的に理解していなければならないでしょう。そこで次回以降、最近読んだ文献の内容も咀嚼し、マーケティングとブランディングの関係について実務を念頭に整理してみます。(次回につづく)

参考文献:
和田充夫(著), 恩蔵直人(著), 三浦俊彦(著)『マーケティング戦略』有斐閣
ウィリアム・A・コーエン(著)『ピーター・ドラッカー マーケターの罪と罰 』日経BP社
デービッド・アーカー(著)『ブランド論』ダイヤモンド社
岩下充志(編著)『ブランディング 7つの原則』日本経済新聞出版社
クレイトン M. クリステンセン(著)『クリステンセン経営論』ダイヤモンド社

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