Writingsコラム

滋賀県の新聞事情

新聞には全国紙と地方紙、そしてブロック紙と3種類あるのをご存知でしょうか? 全国紙は、朝日、毎日、日本経済、読売、産経新聞の5紙。あまり耳慣れないブロック紙とは複数の都道府県で発行される新聞のことで、北海道、東京、中日、西日本新聞の4紙です。地方紙は県紙とも言われ、発行地域が同一県内とその周辺、または県内での限られた地域で発行される新聞を指します。

地方紙は、地元の話題を取材し、掘り下げることに注力していて、全国的な話題は共同通信などの通信社から供給を受けています。通信社は自社の記者を全国に配置し、各地方で取材した情報を集約し、配信する役割を担います。

滋賀県は、大都市である東京や大阪を除いた全国で唯一地方紙がない県ですが、県民は地方紙・京都新聞か、ブロック紙・中日新聞の滋賀県版で、情報を手に入れることができます。傾向として、滋賀県南部では京都新聞、湖北・湖東地域では中日新聞が普及しているようです。また、地方紙の定義である新聞協会に加入していない滋賀報知新聞が、地域に密着した情報を供給しています。

とはいえ、ずっと滋賀県に地方紙がなかったわけではありません。1922年に江州日日新聞が創刊し、滋賀新聞、滋賀日日新聞と名を変え、休刊を繰り返しながらも存続してきました。1956年に京都新聞の僚紙となりましたが、ついに1979年休刊。京都新聞に吸収合併という形になりました。

以来、滋賀県は地方紙不在の時代が続きましたが、2005年4月29日に「みんなの滋賀新聞」が県内有志の出資で創刊しました。通信社からの記事配信契約ができない、新聞協会に加入できないなど、苦難が続きましたが、この年9月に行われた衆議院総選挙(俗にいう郵政総選挙)が9月11日に行われるという最大の不運に遭遇します。選挙報道をするには創刊半年以上経過した新聞でなければならないという規定があるため、「みんなの滋賀新聞」は選挙報道を行うことができませんでした。この大打撃によって9月17日に休刊。10月には社員が解雇。12月には破産宣告で、会社がなくなってしまいました。

現在と違い、当時は電子版を配信するという概念が希薄な時代でした。もし今よりもスマートフォン等が普及し、「みんなの滋賀新聞」が電子版をメイン事業に据えていたら、事情は変わっていたかもしれません。世界的に新聞、特に地方紙は徐々に読まれなくなっていく媒体だとささやかれていますが、時代が変わった今こそ、新しい新聞に進化する可能性を大いに秘めているのが、滋賀県なのかもしれません。

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