Writingsコラム

レモンブームと広島レモン

かつてレモンは、紅茶や唐揚げに添えられて邪険にされたりされなかったりと、ただの脇役扱いでした。その主役にはなり得なかったレモンが、サワーやチューハイなどで人気の味に躍り出て、料理やスイーツの味付けに多用されるようになり、存在感を高めてきました。特に生食では、防腐剤の心配がなく、皮まで楽しめる国産レモンが人気です。

国内でレモンの産地として、誰もが思い浮かべるのが広島県ではないでしょうか。同じく瀬戸内エリアでレモン生産を行う愛媛県を抑え、生産量は全国1位。栽培が始まったのは1893年で、気候風土が合ったため、栽培面積は増え続け、1953年には生産量全国1位を獲得しています。中でも南東部の瀬戸田町、生口島と高根島の2島を中心に栽培されています。

しかし輸入レモンの方が価格が安く、果実も大きいため、大量生産品の原料としての魅力は薄いというのが国産レモンの評価でした。国内消費量も少なく、国際競争力がないため、栽培農家の利益も低く、頭打ちという状態でした。

それを変えたのが2013年から始まった広島県による観光キャンペーンでした。「広島レモン」をブランド化し、イベントや民間企業、JAなどと連携し、関連商品・販路開発を進め、認知度を高めました。

その中で、一番の推進力となったのは、大手飲料メーカー、カゴメやポッカサッポロとの業務提携でレモン飲料を開発し、2012年より全国販売したことかもしれません。2016年にはマクドナルドのシェイクのフレーバーとして期間限定販売したことも認知度を高めました。そこから土産物市場等で小規模展開していたスイーツや調味料、ジャムなどの加工品需要が活性化され、全国規模のメーカーのレモン関連商品販売へと繋がりました。

広島レモンは国内生産シェア6割を占めていますが、大量生産品の原料として国産品の比率は2割に届きません。栽培農家の高齢化対策として、都会からの新規就業者を募るなど、行政が担う課題も多いところです。ですが、レモン市場はまだまだ大きく伸びる余地があり、フレッシュで皮まで楽しめるという利点がある国産品の潜在的需要は大きいでしょう。これからの「広島レモン」の成長にもぜひ期待したいところです。

※統計数は平成28年特産果樹生産動態調査(農林水産省統計)による

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