Writingsコラム

未来への資料を残すアーキビスト

国や自治体が作成した文書を、保管、保存して後世に伝えるのがアーキビスト。保管や保存することをアーカイブと言いますので、その役割を担う人のことになります。公文書館などで働く専門知識を有する職員で、調査研究を行い、研究者や報道機関などの利用者に情報を提供する仕事をしています。これらをデジタル化して保存し、インターネットでの閲覧や検索をしやすいように整えるデジタル・アーキビストという専門職もあり、美術館や博物館の収納品のWebサイト公開などに貢献しています。

図書館司書とアーキビストの大きな違いは、書籍として完成されていない生の記録資料を読み込み、重要なものを選択して保管することです。一枚の文書が何を示しているか、背景を探り出して関連資料を収集する能力も必要です。歴史のみならず、行政学、政治学などの幅広い知識も兼ね備えていなければなりません。

残念なことにアーキビストは、日本ではあまり重要性が認識されていません。欧米諸国では、100年ほど前から役割を果たしてきた蓄積があります。ですから日本の現代史研究者が、欧米の公文書館で資料を探すなど、自国の歴史事実の解明であっても他国頼りとなる寂しい現状になっています。国立公文書館の職員数に限って比較しても、米国は3,112人、英国600人、日本は56人と規模がまったく違います。働く場所によって呼び方が異なり、立場や待遇も安定しているとは言い難く、問題点は多々あります。

専門性の高さにもかかわらず、日本には明確な基準がなかったため、国立公文書館主導で全国の公共団体職員に毎年研修を行っていました。さらなる人材確保と養成のために国立公文書館は、職務内容と、それぞれの職務に必要とされる知識と技能を「アーキビストの職務基準書」として2017年に定義しました。また、資格を設定してアーキビストの基準を揃えようと、2012年に日本アーカイブズ学会が資格認定制度を作りました。デジタルアーカイブについても2005年よりNPO法人日本デジタル・アーキビスト資格認定機構が専門資格の試験・認定を行っています。

欧米では中小規模の自治体にも必ずアーキビストがおり、地域独自の「なくしてはいけない記録」を保管しています。日本も先行する欧米諸国のように、きちんと記録を残し、未来へ継承していきたいものです。

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