Writingsコラム

温泉県・大分の地熱エネルギー利用

国連が提唱するSDGs(持続可能な開発目標)の7番目に「エネルギーをみんなに。そしてクリーンに」という項目があります。脱炭素社会に向けて、自然エネルギーの割合を高めていかなければならない今、日本国内での自然エネルギーの供給ランキングでトップが大分県であることをご存知でしょうか。温泉県としてPRされている通り、地熱発電と地熱利用でのNo.1獲得です(※)。

しかしながら、ほんの少し前までは地熱エネルギーは浴用としてしか利用されていませんでした。が、天候に左右される太陽光発電や風力発電と違い、地熱発電は安定供給することができます。そこに注目したのは海軍中将・山内万寿治でした。将来的に石油・石炭が枯渇したときの代替エネルギー源として1919年に開発を試みましたが、掘削コストが高い等の理由で、開発は民間へ引き継がれました。

事業として受け継いだ東京電燈(株)は、1925年に地熱発電に成功していますが、第二次世界大戦で計画は中断。戦後、電力の安定供給のために計画は再び動き始めます。しかし、ここでもコスト面、発電規模が小さい、国の支援が少ないなどの理由で、なかなか発電所設置は進みませんでした。それでも大分には日本最大の八丁原発電所が1977年にでき、地熱発電の先駆者として安定供給を行っています。

実は火山国日本にとって、地熱利用のメリットはたくさんあります。山内万寿治中将が着目したように、天候に左右されることなく安定供給ができる、燃料不要なために発電コストは安い、CO2の排出量はほとんどない、実現可能な技術を持つ企業が揃っているなど、逆に促進していかない理由はあまり見当たりません。電力供給の発想としても、規模の小さい地域電力で地域社会をまかなっていくという形式に、徐々に転換されてきています。

現在、国内の市町村レベルの小規模地域では、エネルギー自給率が100%という地域が100(※)あります。中でも八丁原発電所のある大分県九重町は自給率2,000%という数字を叩き出しています。また、自然エネルギーの利用率が大きい地域は、食料自給率が高いという研究結果も出ていますし、これからの持続可能な社会を作っていくために、大分の成功例は是非とも参考にしていきたいものです。

※千葉大学とNPO法人環境エネルギー研究所の共同研究2018年度報告書による。

アーカイブ

ページ上部へ戻る