Writingsコラム

しなやかに立ち直る力、レジリエンス

予想を上回る変化が起こりうる現代社会では、従来尊ばれてきたような不屈の精神や揺るぎない強さだけでは対応しにくいことがわかってきました。強風に逆らって折れてしまうことよりも、風を受け流し、傷ついてもしなやかに回復する力「レジリエンス(resilience)」の方が、今、必要とされているようです。

レジリエンスは、もともとは物理学用語です。「外力による歪み=ストレス(stress)」と異なった、「外力による歪みを跳ね返す力」に名付けられていました。後に心理学分野で使われ始め、心理的ストレスからの回復力・抵抗力という意味合いで言葉が広がっていきました。

災害や戦災で負ってしまった心の傷が、回復することができずに残ってしまうと、悪夢を見たり、辛さのあまり現実感を失う場合があります。そういった傷から立ち直る力、レジリエンスが発揮されるためには、社会や組織の支援など環境的要素、もともと持っていた楽観的性格などの先天的要素、成長する過程で身につけた問題解決能力などの後天的要素が必要となります。

仕事でも、真面目で几帳面な性格の人、環境の変化に対して適応するのが苦手な人、組織よりも自己を犠牲にしがちなタイプの人は、我慢を重ねてしまい、ある日突然心がぽっきりと折れ、必要な回復力を発揮できなくなる恐れがあります。そうならないためにも、支援を得るために声を上げる、他人との繋がりを大切にしてサポート体制を組んでおくなど、環境的要素を整えておきましょう。

もともと備わっている先天的性格は、変えることが難しいものですが、ひたすら我慢するのではなく、前向きに解決する後天的能力を少しずつ磨いていきましょう。その際、問題を俯瞰してみるのはいい方法です。自分の能力を客観的に分析していき、強みと弱点をリスト化していくのも効果的。悲観的な感情は、自覚することも必要ですが、いつまでも引きずっていないように、気持ちを楽観的な方向に切り替えることも大切です。大きな目標を持つことも、降りかかるストレスを「些細なこと」として乗り越える力を与えてくれます。

逆境に適応し、成長していく力がレジリエンス。たとえ逆境に陥っても、立ち上がり、前を向いて歩いていける心の強さを、ぜひ育てていってください。

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