Writingsコラム

世界中の砂浜が危ない!?

気候変動によって海面水位が上昇し、砂浜が消えるという話は聞いたことがあると思います。が、今、それ以上に砂浜を削っているのは、砂の過剰採取です。東南アジアの島々の砂がドバイや中国などに運ばれ、海岸線が破壊されてきており、ひどい場合は島ごと消滅してしまったという事例も20島以上あるようです。

なぜ海砂が必要とされているのかといえば、それは砂がコンクリートの材料となるからです。他にも砂はガラスや電子機器、鋳型、シェールガスの採掘時などに使用されており、近代産業にとって重要な原材です。国土の大半が砂漠であるアラブ首長国連邦(UAE)は、なぜか砂の輸入量が莫大で、ドバイなどの都市整備に使われています。近くに砂漠があるのだからそれを使えばいいではないかと素人は考えますが、実は建築用のコンクリートに砂漠の砂は粒子が細かすぎ、表面がツルツルなので、コンクリートが固まらないのだとか。

コンクリートの材料に最も適した砂は、塩分を含まない川砂です。日本では1960〜70年代の建築ラッシュ時に、川砂はほぼ掘り尽くしてしまった模様。海砂も同様で、例えば瀬戸内海では採取量増加と比例して漁獲量が減少したので、採掘制限を設け、2005年度には全面的に取りやめています。

海岸の砂は、山から川を通じて運ばれてきます。しかし森林伐採で山の保水力がなくなり、土砂災害が頻発するようになりました。各地で砂防ダムが作られ、従来であれば海に運ばれていたはずの砂はせき止められ、海に届かなくなりました。ダムに溜まった砂を海に戻そうという計画もありますが、ヘドロなどと混じった砂は難しいようです。日本においての海岸線の侵食対策としては、波の力を弱くする離岸堤、水面下にコンクリートを沈めた潜堤、海岸付近に幅広い浅瀬を作る人工リーフなどの護岸工事が行われています。

このまま開発が進んでいくと、世界中で砂不足となり、どんどん砂浜がなくなっていきます。海岸線が後退すると、高潮のリスクが高まります。さらに海流の変化を招き、漁場破壊が起こって、沿岸住民の生活が脅かされます。

砂を採掘し尽くした日本では、輸入に頼り切るのではなく、リサイクルの道を探っています。古くなった建物のコンクリートをすりつぶして再利用するという方法もあるとか。世界では、砂漠の砂を建材として利用するための開発実験が繰り広げられているようです。美しい海岸線と人々の暮らしのためにも、こうした試みが成功することを願わずにはいられません。

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