Writingsコラム

千葉の発酵・醸造文化

千葉県といえば、醤油の生産量が全国1位で、キッコーマン(野田市)、ヤマサ醤油にヒゲタ醤油(銚子市)と大手メーカー3社が工場を構えています。他にも昔ながらの樽仕込み製法で作られた下総醤油が名高いちば醤油(香取市)、天然醸造にこだわった宮醤油店(富津市)、一年以上熟成させた醤油が自慢の小倉醤油(銚子市)、六十石という日本最大規模の巨大樽を使って醤油を仕込むタイヘイ(匝瑳市)などが、個性的な醤油を作り続けています。

醤油の醸造は平安時代に伝わってきましたが、鎌倉時代に製法が定まり始め、室町時代末期に盛んになってきました。関西を中心に大量生産化が進んでいきましたが、江戸時代に政治の中心が移ると、人口増加に応えるため、利根川、江戸川の水利に恵まれた野田や銚子といった千葉県北部に醤油生産の拠点が築かれます。文化・文政期に江戸前の調理法が確立されると、江戸っ子好みの濃口醤油が作られるようになりました。

野田や銚子は、原材料の調達にも便利な土地でした。大豆は近隣の下総(千葉県北部〜茨城県西部)、常陸(茨城県)、武蔵(埼玉県周辺)から。塩は行徳より運ばれ、江戸の需要に応えるように生産されました。野田から江戸へ運搬する時間は想像以上に早く、順風だった場合、最短8時間で帆船が到着したそうです。残念なことに、この水の道は、関東大震災の復興工事でコンクリートの原料として江戸川の砂を大量に採取したため、打撃を受けてしまいましたが、醤油の生産は順調に拡大し続けました。

千葉県で江戸好みの進化を遂げた調味料はもう一つあります。それはみりん。江戸中期まではみりんは赤く、甘い酒として飲まれていましたが、酒の醸造が盛んであった流山の秋元家と堀切家が、今の一般的なタイプである透明な「白みりん」を開発。そばつゆなどの料理に利用するようになり、関西の赤みりんを席巻するようになりました。

千葉に広がる醸造文化は、和歌山や兵庫から伝わった醤油や酒造りが原点です。漁場を求めて房総半島までやってきた漁師が定住し、製造方法を伝授したと言われています。醤油やみりんだけではなく、味噌は佐倉市、金山寺味噌は東金市、それらの原料の一つである麹を使った甘酒を販売する製造元など、千葉県の特産品には醸造・発酵食品がたくさんあります。

これらは通信販売や一部スーパーでも手に入れることができますが、千葉県には道の駅が29もあり、多岐にわたる特産品を入手するには最適の場所です。中でも「道の駅 発酵の里こうざき」(神崎町)は全国唯一の発酵をテーマにしており、県内のみならず全国から発酵食品が集められています。地元で栽培された大豆を使用した納豆などが販売され、発酵食品好きにはたまらない場所のようです。

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