Writingsコラム

長野の真ん中、諏訪湖と諏訪大社

長野県のほぼ中央に位置し、県内最大の湖である諏訪湖。山の隆起と断層の活動によって地殻が引き裂かれてできた湖で、アニメ映画「君の名は。」に出てくる「あの湖」のモデルと言われています。

標高759mに位置し、周囲を山岳地帯に囲まれた盆地にある諏訪湖は冬に氷結します。全面氷結すると放射冷却でさらに冷え込み、迫り上がった氷柱ができます。その際、大きな音が鳴り響くのだとか。これを「御神渡(おみわた)り」言い、神が通った跡であるとされています。この氷柱の方向と高さで、その年の吉凶を占っていました。しかし、近年の温暖化のせいで、御神渡りは減少。冷え込みが厳しかった2022年は期待されていましたが、残念ながら7年連続御神渡りなしという結果に。

諏訪湖の周辺には諏訪大社があります。全国にある諏訪神社の総本社で、国内にある最も古い神社の一つです。JR中央本線上諏訪駅から6kmほど離れた場所に上社本宮、やや離れた場所に上社前宮。下諏訪駅から1kmほどの場所に下社秋宮、下社春宮があります。下社では秋宮と春宮で御霊代が行き来します。8月1日〜1月31日までが秋宮、2月1日〜7月31日までが春宮で、遷座祭は大きな船を担ぐためにお舟祭と言われているようです。

諏訪大社といえば、山の傾斜面から大木を下ろす「御柱(おんばしら)祭」が有名です。7年に一度、寅年と申年に行なわれ、1200年の伝統があります。正式には「式年造営御柱大祭」といい、2つのステップを踏む大祭です。

祭事に使われる御柱は4月に神林で伐採されます。これを「山出し」といい、3日間かけて氏子たちが大木を運んでいきます。有名な木落しが行なわれるのはこの行程で、最終日で最も盛り上がる場面となります。

それから1月後の5月に3日かけて行なわれるのが「里曳き」。こちらは御柱に、着飾った騎馬行列や花笠踊り、長持ち行列などが付き添う華やかなもの。四社にそれぞれ御柱が運ばれ、冠落としという先端を三角錐に切り落とす行事を経て、御神木となって次の御柱が来るまで人々の崇敬を集めます。

諏訪大社上社本宮には、伝説の大相撲力士・雷電の銅像があります。254勝10敗2分という驚異の成績を残した力士で、信州出身。地元を代表するヒーローです。なぜここに、という疑問も湧きますが、神社では勧進相撲も行われていた歴史がありますし、国譲りの神話でタケミカヅチとの相撲に負け、諏訪に封じられたタケミナカタにあやかっているためかもしれません。ちなみにこの地で活躍した武将・武田信玄の信仰した神様は、諏訪大社の祭神タケミナカタだという話も伝わっています。山に囲まれたこの地域は、力強さが最も好まれるようです。

2022年は寅年で、7年に一度の御柱祭が開催される年ですが、一部行事は中止の模様。厳しい冬を経て、草木が一斉に芽吹く春に行われる勇壮な祭りが、完全な形で行われる日を楽しみに待ちましょう。

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