Writingsコラム

海産物王国・兵庫県

兵庫県といえば、異人館や南京町など異国情緒が楽しめる日本有数の港町・神戸が真っ先に思い浮かぶのではないでしょうか。関西の主要経済圏・京阪神の一角を占めてはいますが、兵庫県全体では、北は日本海、南は瀬戸内海に接しており、案外広くて、地域によって特徴が異なります。

地域は大まかに分けて摂津(せっつ)、播磨(はりま)、丹波(たんば)、但馬(たじま)、淡路(あわじ)島の5地域で、面積は全国12位。気候は中国山地を境に、日本海側は雨や雪が多く、瀬戸内海側は温暖で冬は乾燥した日々が続きます。海岸線の様子も、日本海側は山から海岸へ落ちる地形で、瀬戸内海側は浅瀬でなだらかです。この対照的な地形と気候は日本の全体的な特徴そのもの。それが兵庫県の中に集まっているため、バラエティ豊かな自然の恵みをもたらしてくれます。

農業を始め、神戸牛に代表されるように畜産業も盛んですが、漁業に視点を絞ってみれば、日本海側は海深が深く、沖合での底引網漁業が行われています。ズワイガニ、ホタルイカ、ハタハタの漁獲高は全国一位。特にホタルイカは富山県の方が有名ですが、兵庫県は二倍以上の漁獲高。これは、富山県はホタルイカを誘い込む定置網漁であるのに対し、兵庫県は海底に網を沈めて引き上げる底引網漁が主流のためです。そのため価格も兵庫県のホタルイカの方が安く楽しめます。

対する瀬戸内海側は、水深が浅く、波が穏やかなため、イカナゴやシラス漁が盛んです。こちらも共に全国一位を誇ります。また、カキやワカメなどの養殖も盛んです。ちなみにノリの養殖は全国二位となっています。しかし海の栄養不足でノリの色落ちが問題化していたり、昔ながらの小規模漁業であるため、漁業者の高齢化と後継者不足が課題となっています。

もう一つ、瀬戸内海に面した漁といえば、明石(あかし)のタコ漁が名高いでしょう。2,000年以上前にタコ漁に使われたツボが発見されるなど、歴史は古いものです。しかし近年、漁獲量が激減しているとか。元々タコは暑さに強いので、海水温の上昇が直接的原因ではありません。植物性プランクトンを育てる海中の栄養素が減ってきており、餌となるエビやカニが減っているためです。釣り客による6〜8月以外の禁漁期のタコ釣りも原因の一つと言われています。

瀬戸内海沿岸は工場も多く、工場排水などの規制強化や、森林地帯を保護することで海に流れる栄養素を確保しようとしていますが、これは時間がかかる取り組みです。それらに加え、海底を耕して海中に栄養を行き渡らせる、養殖技術の開発、小さな個体は海に戻すなど、大小さまざまな努力を並行して行っています。豊かな海の恵みを守るため、私たちも協力していきたいものです。

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